はじめに
「働き方改革」という言葉をどこかで聞いたことはないでしょうか。ニュースや新聞などで特集が組まれるなど、興味深いキーワードの一つであると思います。2019年4月より「働き方改革関連法」が順次施行され、その後も企業を中心に社員ひとりひとりの働き方への注目度が増し、働き方の見直しが進められています。
厚生労働省は、働き方改革が目指すものを次のように示しています。
出典:厚生労働省HP「働き方改革」の実現に向けて(一部抜粋)
そんな中、事務所への出社があたりまえとされる従来の営業スタイルにとらわれず、自宅から直接取引先へ訪問し、事務所に戻らず自宅に帰る「直行直帰型営業」を行っている企業も増えていると思います。
そこで今回は会社の車両管理を行うにあたり、「直行直帰型営業」におけるチェックポイントをいくつかご紹介したいと思います。 ここではリース車両のほか、マイカー(会社による借り上げ制度)を利用するケースもふまえてお話します。
直行直帰型営業での車両管理のポイント
1:車検証の使用者名義
直行直帰型営業の場合、車両の使用拠点が自宅になることがほとんどだと思います。その場合、車検証上の使用者名義は会社名義(法人)ではなく、運転手本人(個人)になります。これはその車両の"主たる使用拠点はどこか"、という観点から考えるためです。自宅であれば個人名義、会社事務所であれば法人名義となります。関係各署に対しては実情に即した適切な内容で申請をする必要があります。
本来申請すべき住所と異なる内容を故意または悪質に申請した場合は立派なコンプライアンス違反となり、いわゆる「車庫飛ばし」と受け取られても何の言い訳もできません。最悪の場合、車両管理者や使用者(法人代表者)が書類送検となるケースも考えられます
※車庫飛ばしについて詳しくはこちらをご覧ください
コンプライアンス違反にならないよう、車両毎に主たる使用先がどこにあたるのかをよく把握し、そのうえで正しい内容で申請する必要があります。
2:任意保険の加入
リース車両の場合は法人が保険契約者となって任意保険に加入するケース、またはリース契約に任意保険契約自体を含んでいるケースが多いと思います。いずれの場合も運転手本人が直接加入手続きに関わることはほとんどありません。
一方、マイカーを営業で使用する場合は運転手本人が任意保険の加入手続きを行い、その後の更新手続きまで行うことが一般的です。しかしマイカーを会社の事業活動で使用する以上、会社として事故発生時のリスクを負わなければなりません。
出典:民法715条(一部抜粋)
出典:自動車損害賠償保障法3条(自賠法)(一部抜粋)
以上の法令からも業務中のマイカー事故でも会社が責任を負うことは避けることができません。マイカーの任意保険が加入されているか、満期はいつか、会社が定めた補償内容を満たしているか等、会社として管理・把握をする必要があります。
3:運転日報の管理
直行直帰の場合、自宅に車両を置いているため業務とプライベートでの使用の区別がつきにくくなります。休日の車両使用においては、会社によってルールや許可申請の方法も異なります。また、事故発生時の責任の所在が個人なのか会社なのかを明確にできる管理体制でないと、のちのち運転手とトラブルに発展することも考えられます。
そのため、会社として業務による車両利用の記録をとっておく必要があり、それが運転日報管理の必要性にもつながると考えます。
社有車を保有する事業所には必ず「安全運転管理者」が人選されており、その任務の一つに運転日報に関するものがあります。
運転日誌の備付、記録
運転者名、運転の開始及び終了の日時、運転した距離その他自動車の運転の状況を把握するため必要な事項を記録する日誌を備え付け、運転を終了した運転者に記録させること。出典:道路交通法74条の3第2項、規則第9条の10
くるまが2016年7月21日号「運転日報の作成義務と活用方法」もあわせてご覧ください
業務とプライベートでの区別をつけるためには、運転日報の必要項目とされる「行き先」「時間」「走行距離」「給油情報」などを抜けモレがないよう車両利用者に記載させる必要があります。 また従来の日誌形式のものではなく、テレマティクスサービスを用いたデジタル記録媒体のものも多く見られるようになりました。こちらは運転手の記入の手間を省けるほか、デジタルデータによる簡単な保存、GPSを利用した記録サービス、日誌削減によるペーパーレスなどの効果も期待できます。
最後に
「直行直帰型営業」の管理におけるチェックポイントについて、いくつかご紹介しましたがいかがでしたでしょうか。 ご紹介したすべての内容に共通するのは、会社と個人の間に存在する曖昧な部分のリスクを明確にし、会社としてその備えをするということです。
自宅が使用拠点になったり、マイカーを業務で利用したりすることで、事業活動とプライベートとの境界線がわかりにくくなるのも事実です。 上記の内容を踏まえて、みなさんの会社の管理体制を一度振り返っていただき、どのようなリスクが潜在しているかを見直すきっかけにして頂ければ幸いです。