冬本番になると冷え込みの厳しい朝晩は凍った路面でスリップして電柱や壁などに追突している車を見かけたことがあるかと思います。降雪時、特に凍結路面の運転はスリップしやすく、車の操作が難しいものです。今回は雪道でのスリップ事故の原因と対策、スリップが起きた場合の対処方法についてお話します。
雪道で事故が起きやすい理由
雪道・凍結路で事故が起きやすいのは、晴天時とは違う路面状態に原因があります。雪や氷は圧力がかかると一瞬で溶けて水になる性質があります。車の走行で雪や氷に圧がかかると薄い水の膜がタイヤと路面の間に発生し、路面が滑りやすくなる「ハイドロプレーニング現象」が起こります。雪道でのスリップの主な原因は、このハイドロプレーニング現象だと言われています。
ハイドロプレーニング現象が起こると、タイヤのコントロールが効かなくなり、ハンドル・ブレーキ操作を失うため追突・衝突事故に繋がります。特に雪の降り始めは、路面に砂や土などが浮いてスリップしやすい状態になるので注意が必要です。
雪道を安全に走るためには
雪道を安全に走行するために行いたい対策をご紹介します。
1:冬用タイヤ(スタッドレスタイヤ)の装着とタイヤチェーンの装備
雪道走行の必需品といえば、やはりスタッドレスタイヤです。スタッドレスタイヤは夏用タイヤとは違い、低温でも柔らかさを保てる特殊なゴムでできています。このゴムが凸凹の多い凍結路や雪道でも路面に密着することで生まれる高いグリップ力が特徴です。また、氷上性能に優れており、スリップの原因となる道路とタイヤの間にできる水の膜を取り除くことで冬の路面でも安定した走行が可能となります。
しかし、スタッドレスを履いていてもスリップの可能性がゼロになるわけではありません。雪が圧縮されてできたアイスバーンのような路面状態では冬用タイヤを履いていてもスリップする可能性があるため、より慎重な運転が求められます。さらにタイヤのコンディションも重要です。タイヤ交換時や運転前にはタイヤの空気圧、残り溝、ヒビといった状態チェックも忘れず行いましょう。
また、チェーン規制の区間では冬用タイヤを装着していてもタイヤチェーンが必要となりますので、車に装備しておきましょう。
2:凍結しやすい場所では慎重に
橋の上、トンネルの出入り口付近、交差点、日陰になった場所などは、雪や氷が溶けにくい・水が凍りやすい場所です。日中は良くても、朝晩の冷え込みで再び凍結する可能性もあるので日暮れから翌朝までは特に慎重な運転が必要です。特に夜間は凍結した道路が濡れたように見える「ブラックアイスバーン」の状態に陥り、路面凍結に気付きにくいため注意して走行しましょう。
3:「急」のつく動作をしない
雪道では急ブレーキ、急ハンドル、急加速、急発進といった「急」のつく運転動作は禁物です。冬用タイヤは雪道でのグリップ力に優れていますが、急な動作のもとでは性能を発揮することができません。速度を落として走行することで、路面をしっかりとつかんでくれるのです。
4:車間距離を取り、ゆっくり走行しよう
路面凍結に備えて走行する時は万が一スリップした時の事を考え、いつもより長めに車間距離を取り、ゆっくりとした速度で走行しましょう。凍結や積雪した道路を走り始める時は、クリープ減少を利用して静かに走り出しましょう。停止する時はエンジンブレーキを活用し、普段より早めに減速を始めて軽くブレーキを踏んだだけで停止できるようにしましょう。
もしも車がスリップしてしまったら
万が一車がスリップした場合はどうすればいいのでしょうか。ここではスリップへの対処法をご紹介します。
1:アクセル・急ブレーキを踏まない
まずやってはいけないのはアクセルと急ブレーキを踏むことです。スリップ時はタイヤが地面をグリップしていない状態なので、アクセルを踏んでも加速しません。アクセルを踏み込んでしまうとグリップ力が戻った時に急加速することになり、前を走る車に追突したり、ハンドル操作が追い付かずカーブから飛び出す危険があります。
急ブレーキはタイヤがロックされてしまうため、グリップ力が戻った時点でさらにスリップが起きて完全に制御不能な状態に陥り、大変危険です。立て直すことは難しく、通常の方法で止まることができなくなってしまいます。スリップした時に反射的に急ブレーキを踏むと、大きな事故につながる危険が高まります。
2:急ハンドルは控える
スリップした時に急ハンドルを切ると、タイヤのグリップ力が戻った時いきなり思わぬ方向に車が方向転換します。スリップすると急にハンドルが軽くなるので、この時大きくハンドルを回さないよう注意してください。
3:パニックでも極端な動作をしない
スリップしてもパニックに陥ってアクセル・ブレーキ・ハンドルとも、極端な動作をしないことが必要です。落ち着いて状況を見極めてタイヤのグリップ力が戻るのを待つことが肝心です。多くの場合、グリップ力は少しずつ回復します。
大きくスリップした際は、車がスピンしてしまうことがあります。その場合は「カウンターステア」という動作が有効です。後輪が右側にスリップしていたらゆっくりとハンドルを右に、左側にスリップしていたらゆっくりとハンドルを左に操作しましょう。スリップが収まってきたらハンドルを少しずつ戻します。前輪がスリップすると制御がかなり難しくなりますが、普通の運転をしていればほとんどありません。
最後に
冬の運転には十分な雪道対策が必要となります。冬用タイヤなどの車の装備や、運転テクニックはもちろんですが、事故を未然に防ぐ「かもしれない運転」の意識を忘れないようにしましょう。「この先、凍っている"かもしれない"」「前の車が急停車する"かもしれない"」と起こりうる危険を想定して運転することで安全に走れるようになります。また、大雪での立ち往生など非常事態に備えて雪かき道具や簡易トイレなど防災用品の車載をしておくとさらに安心です。
雪の降り具合によっては天気予報や外の状態を確認し、運転が危険だと感じた場合には運転自体を控えるという判断も大切になります。天候や路面状況などあらゆる状況を見極め、落ち着いた判断を行い、安全運転を心掛けましょう。