2024年11月から道路交通法が改正され、自転車運転に関する罰則が強化されました。都心部では自動車よりも手軽な移動手段として、営業活動に自転車を使用する企業もあるようです。そこで今回は、改正道路交通法の紹介と自転車の運転ルールについて確認していきたいと思います。
今回の法改正でどう変わる？
法改正に伴い、自転車運転中の「ながらスマホ」に対する罰則と「酒気帯び運転、ほう助」に対する罰則の２つが変わります。
今回の法改正の背景には、近年自転車による交通事故の増加傾向が続いていることがあります。警察庁の統計によると、令和5年（2023年）中の自転車が第1当事者（過失割合が高い方）又は第2当事者（過失割合が低い方）となった交通事故（自転車関連事故）は72,339件で前年より2,354件増加しました。自転車関連事故の件数は、全交通事故に占める割合が2割を超え、令和3年（2021年）以降、増加傾向にあります。
１：自転車運転中の「ながらスマホ」に対する罰則
自転車の運転中、停止している間を除いてスマホで通話したり画面を注視する「ながらスマホ」が禁止され、罰則が強化されました。スマホを手で持って画面を注視することはもちろん、自転車に取り付けたスマホ画面を注視することも禁止となります。
＜禁止事項＞
・自転車運転中にスマホで通話する事（ハンズフリー装置を併用する場合を除く）
・自転車運転中にスマホに表示された画面を注視する事
※どちらも自転車が停止している時を除く
＜罰則内容＞
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罰則内容 |
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改正前 |
5万円以下の罰金 |
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2024年11月から |
自転車運転中にながらスマホをした場合 |
6か月以下の懲役又は10万円以下の罰金 |
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自転車運転中の「ながらスマホ」により交通事故を起こすなど交通の危険を生じさせた場合 |
1年以下の懲役又は30万円以下の罰金 |
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２：自転車の「酒気帯び運転、ほう助」に対する罰則
自転車は道路交通法上「軽車両」に位置付けられ、車両として扱われます。そのため飲酒をして自転車を運転することは自動車と同様禁止されています。これまでは酩酊状態で運転する「酒酔い運転」だけが処罰の対象でしたが、法改正により「酒気帯び運転※」についても罰則の対象となります。また、自転車の飲酒運転をするおそれがある者に酒類を提供したり、自転車を提供すること（酒気帯び運転のほう助）も禁止です。
※血液1mlにつき0.3mg以上または呼気1Lにつき0.15mg以上のアルコールを身体に保有した状態で運転する事
＜禁止事項＞
・酒気を帯びて自転車を運転すること
・自転車の飲酒運転をするおそれがある者に酒類を提供すること
・自転車の飲酒運転をするおそれがある者に自転車を提供すること
・自転車の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、自転車で自分を送るよう依頼して同乗すること
＜罰則内容＞
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罰則内容 |
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改正前 |
5年以下の懲役又は100万円以下の罰金 ※酒酔い運転の場合のみ |
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2024年11月から |
酒酔い運転 |
5年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
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酒気帯び運転 |
3年以下の懲役又は50万円以下の罰金 |
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自転車の飲酒運転をするおそれがある者に自転車を提供し、その者が自転車の酒気帯び運転をした場合 |
自転車の提供者に3年以下の懲役又は50万円以下の罰金 |
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自転車の飲酒運転をするおそれがある者に酒類を提供し、その者が自転車の酒気帯び運転をした場合 |
酒類の提供者に2年以下の懲役又は30万円以下の罰金 |
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自転車の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、自転車で自分を送るよう依頼して同乗し、自転車の運転者が酒気帯び運転をした場合 |
同乗者に2年以下の懲役又は30万円以下の罰金 |
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３：青切符の取り締まり
今回の改正道路交通法では、ながらスマホの罰則強化等に加えて自転車の交通違反に対して反則金を納付させる、いわゆる「青切符」による取り締まりの導入が規定されました。青切符による取り締まりは16歳以上を対象とし、113種類の違反行為を適用範囲としています。
特に信号無視や一時停止無視、携帯電話を使用しながらの運転等、重大事故につながる可能性のある違反行為に対しては、重点的に取り締まることが予定されています。
この青切符による取り締まりは、法律の公布（2024年5月24日）から2年以内に施行される予定で、反則金等の詳細は今後政令で定められる予定です。
４：自転車運転者講習の対象となる危険行為の追加
交通の危険を生じさせるおそれのある一定の違反行為（危険行為）を繰り返す自転車運転者に対して「自転車運転者講習」が義務付けられていますが、今回の改正に伴い、「ながらスマホ」と「酒気帯び運転」も講習の対象となる「危険行為」に追加されることになりました。
これらの違反行為を３年以内に２回以上検挙された場合には、都道府県公安委員会は違反者に対し、３か月を超えない範囲内で期限を定めて自転車運転者講習を受講するべきことを命ずることができます。
命令を無視し、自転車運転者講習を受けなかった場合には５万円以下の罰金が科されます。
あなたはしていませんか？罰則のある運転方法
ながらスマホや酒気帯び運転以外にも、法令で罰則のある危険な運転があります。
- 傘さし運転（５万円以下の罰金）
- イヤホンやヘッドフォンを使用するなどして安全な運転に必要な音又は声が聞こえない状態での運転（5万円以下の罰金）
- ２人乗り（5万円以下の罰金。都道府県公安委員会規則の規定で認められている場合を除く。）
- 並進運転（2万円以下の罰金又は科料。「並進可」の標識があるところを除く。）
この中にはやってしまったことのある行為があるという方もいるのではないでしょうか。特に自転車が２台以上並んで走る「並進運転」は、違反だと知らなかったという方も多いかと思います。いずれも事故につながる危険な行為なので、絶対にしないようにしましょう。
自転車安全利用五則を守ろう
警察庁の調査によると、自転車事故で亡くなった人の８割、けがをした人の７割が何らかのルール違反をしていたことが分かっています。自転車を運転する際の基本的なルールに「自転車安全利用五則」があります。自転車の運転ルール順守を徹底し、事故を防ぎましょう。
１：自転車は車道が原則、左側を通行 歩道は例外、歩行者を優先
道路交通法上、自転車は軽車両と位置づけられています。したがって、歩道と車道の区別のあるところは車道通行、自動車と同じ左側通行が原則です。歩道を通行する場合は車道よりの部分を徐行し、歩行者の通行を妨げる場合は一時停止しましょう。
２：交差点では信号と一時停止を守って、安全確認
道路を通行する際は、信号機等に従わなければいけません。特に、横断歩道を進行して道路を横断する場合や歩行者用信号機に「歩行者・自転車専用」の標示のある場合は、歩行者用信号機に従わなければなりません。一時停止標識のある場所、踏切などでは、必ず止まって左右の安全を確認しましょう。
３：夜間はライトを点灯
無灯火は他から自転車が見えにくくなるので非常に危険です。安全のため、夜間はライトを点灯し、反射器材を備えた自転車を運転しましょう。
４：飲酒運転は禁止
自動車の場合と同じく酒気を帯びて自転車を運転してはいけません。また、酒気を帯びている者に自転車を提供したり、飲酒運転を行うおそれがある者に酒類を提供したりしてはいけません。
５：ヘルメットを着用
自転車を運転する場合は事故による被害を軽減させるため、乗車用ヘルメットをかぶりましょう。自転車のヘルメット非着用時の致死率は、着用時に比べて約2.3倍とも言われます。また、2023年4月1日からヘルメットの着用は努力義務化されていますので大人でもヘルメットを装着しましょう。
最後に
自転車は運転免許が不要で誰でも乗れる手軽な移動手段ですが、危険運転行為によって事故の相手方が亡くなるケースもあります。過去には事故を起こした運転者や家族に数千万円の損害賠償を命じた判決事例もあります。加害者になった時のためにも自転車運転中のリスクをカバーする自転車保険等へ加入し、万が一への備えも考えておくと安心です。そして何より、安全な自転車利用が交通事故防止への近道です。今一度自分の自転車の安全運転ルールは守れているか見直し、正しく乗るように心掛けましょう。