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アルコール依存症と飲酒運転の関係

 年末が近づいてくると飲酒の機会が増える傾向があり、管理者の皆さんは忘年会などの前には飲酒運転について従業員に厳しく周知していることと思います。もちろん飲酒運転は犯罪ですが、飲酒運転はアルコール依存症と密接な関係があることをご存知ですか?今回はアルコール依存症と飲酒運転の関係についてお話したいと思います。

 

アルコール依存症ってどんな病気?

 アルコール依存症は多量の飲酒を続けることで脳の機能が変化し、自分で酒の飲み方をコントロールできなくなる病気です。つまりアルコール依存症になると、運転業務があっても飲みたい欲求を抑えられず、業務中に飲酒運転状態で事故を発生させる可能性もあります。

アルコール依存症の具体的な症状をご紹介します。

1:飲酒をコントロールできない

2411_2_1.png・今日は車だから飲まずにいようと思っていても、つい飲んでしまう。

・翌朝運転する予定があるのに、二日酔いになるほど飲む。

2:アルコールに耐性ができている

2411_2_2.png・少量では飲んだ気がせず深酒し、アルコールが翌日に残る。

・寝酒をしているうち必要な量が増え、アルコールが翌朝に残る。

3:強迫的な飲酒欲求がある

2411_2_3.png待ちきれず、就業中・運転中に隠れて飲む。

・家で飲んでいてお酒が足りなくなると、わざわざ車で買いに行く。

4:アルコールが身体から抜けると、不快な症状が出る

2411_2_4.png・朝や日中に迎え酒をする。

・アルコールが抜けてくると離脱症状(汗、微熱、吐き気、イライラ、不眠など)が起き、飲むとおさまるので迎え酒が習慣化する。

5:生活が飲酒中心になっている

2411_2_5.png・病気が進行すると深酒・迎え酒で体内からアルコールが完全に抜ける時がないので、結果的に運転すればいつでも飲酒運転になる。

6:問題が起きているのに飲酒をやめられない

2411_2_6.png・飲酒運転で検挙されたのに、また飲酒運転をする。

・健康上、仕事上、家庭の中にも問題が起きているのに、飲酒をやめられない。

 

 アルコール依存症は自覚しにくく患者自身が容易に認めない傾向が強いため、治療には本人の自覚が必要です。診断基準の目安になるのは、AUDITというスクリーニングテストになります。

治療は多くの場合入院治療となりますが、患者の心身状態が安定していて本人や家族が生活改善を自力で進められる場合には外来治療が行われることもあります。回復するためには断酒(お酒を飲まない事)を数年続ける必要があり、一般的には約3年継続すれば安定した日常生活が送れるようになると言われています。

 

アルコール依存症と飲酒運転の密接な関係

 アルコール依存症は飲酒へのコントロールを失う病気です。生活の中で飲酒への優先順位が高くなるため、症状が進行するほど飲んではいけない場面で酒を飲んでしまうということが起こります。

筑波大学がアルコール依存症患者110名について調査した結果によると、対象者のほとんどが飲酒運転をしたことがあり、その中の約6割が事故を起こしていることが分かりました。

 飲酒運転はれっきとした犯罪です。しかし、アルコール依存症患者はそれが分かっていても飲酒の衝動を抑えられず、酔った状態で運転してしまうのです。中には運転による緊張感の緩和や蓄積した疲労の解消のためにアルコール摂取する場合もあり、「飲まないと運転できない」とすら考えてしまう人もいるような恐ろしい病気です。

車両管理者にとっては社内から飲酒運転を根絶するために、アルコール依存症への理解を深めておくことは重要です。

 

 

アルコール依存症への対応

では、ドライバーからアルコール依存症の症状が見られた時、企業としてどのように対応するのが良いのでしょうか。

 アルコール依存症は早期発見・早期治療が鍵になります。本人に対してはスクリーニングテストの実施や、専門医への受診、治療をお勧めします。しかし、「病院に行ったら運転業務に携われなくなるのでは」と検査や受診をしようとしない人もいます。このため、アルコール依存症のリスクを正しく周知し、社内ルールを整備して受診しやすい環境を整えることが重要です。

 また、周囲の人たちの理解と協力を得ることが重要です。患者本人は症状に自覚がなく気付きにくいため、自分の意志でコントロールしようとすると度々失敗してしまいます。本人が回復の必要性を自覚するには時間がかかるため、周囲の適切なサポートが必要です。

企業の対応については、社内規定の中で明文化しておくことも大切です。アルコール依存症検査の実施について、検査結果を受けての専門医の受診、乗車前後のアルコールチェック体制構築など、依存症患者の早期発見・早期治療を促すと同時に従業員が飲酒運転をしないための仕組み作りをしておくことで、スムーズな対応が期待できます。

 また、アルコール依存を防ぐための対応として、アルコール依存症はどんな病気か、飲酒運転の悲劇などを従業員に伝える、グループディスカッションで話し合い理解を深めるという活動もおすすめです。

 

 

最後に

 アルコールは嗜好品であると同時に、依存性のある薬物というもう一つの顔を持っています。日々飲酒している人は長い年月をかけて知らぬうちにアルコールに依存していき、アルコール依存症予備軍になる可能性があるのです。

2024年9月現在、アルコール依存症患者は予備軍も含めて295万人いるといわれる身近な病気です。一度依存症になってしまうと、断酒をして「回復」することはできても以前のように節度ある飲酒をすることは難しくなり、完治することはないと言われています。

 アルコール依存症になりにくい飲み方は、深酒せず適量を心掛けて休肝日を週2日以上設けることと言われています。アルコール依存症は職場や家庭を巻き込んだ悲劇を引き起こす可能性がある恐ろしい病気です。自分だけでなく自分の周りの人を守るためにも、適切なお酒の付き合いを徹底しましょう。