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高齢ドライバーを取り巻く現実と対策

 高齢ドライバーが運転操作を誤るなどして重大事故を起こすニュースをよく耳にします。最近では202464日午後240分ごろ、埼玉県熊谷市で横断歩道を歩いていた小学1年生が84歳の男性が運転するワンボックス車にはねられる事故が起きました。そこで今回は高齢ドライバーの実態と運転能力の変化、事故を起こさないための対策などについてお話したいと思います。

高齢ドライバーによる事故の実態と原因

 75歳以上のドライバーが当事者となる死亡事故件数の割合は増加傾向にあります。警察庁のデータによると2021年には過去最高の15.1%になり、高齢者が安全に車に乗る重要性はより一層高まっています。

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 高齢ドライバーの死亡事故数が増加している原因に、加齢による身体能力の低下があります。年齢や体力、経験などによって個人差はありますが、身体能力低下をはじめとした「高齢ドライバーの特性」が大きく影響していると考えられます。

<高齢ドライバーの特性>

・注意力や集中力が低下している

・瞬間的な判断力が低下している

・過去の経験に囚われる傾向がある

 加齢に伴う動体視力の衰えや判断時間の遅れといった身体機能の低下により、危険の発見が遅れがちになります。また、高齢ドライバーは確認を怠り、思い込みで運転する傾向が強いと言われています。このような運転傾向の原因は、運転に必要な「認知・判断・操作」の能力低下、仮に認知や判断ができても思ったように体が動かず「頭の中のイメージに身体が付いてきていない」ということが考えられます。

 高齢運転者が起こした死亡事故原因を見ると、操作不適と安全不確認が約5割を占めています。「認知・判断・操作」の能力低下が引き起こすハンドル操作ミス、ブレーキとアクセルの踏み間違いなどがこれに当たります。

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事故リスク軽減のためにできること

 高齢になっても事故リスクを軽減する方法はあります。自分の運転能力を確認し、運転能力を維持・向上するためのトレーニングを行うことです

 運転能力のチェックは、警視庁の運転認知障害早期発見チェックリスト30や、トヨタ・モビリティ基金の運転能力診断などで簡単に行えます。運転への不安がある方やご家族から心配されている方はもちろん、運転に自信がある方も一度チェックすることをお勧めします。

 また、運転に重要な「認知・判断・操作」機能の維持向上に必要なトレーニングも各種機関で配布されています。

日本自動車工業会「交通脳トレ3ヶ月」
JAF「エイジド・ドライバー総合応援サイト」

 運転能力の維持はもちろん大切ですが、事故を起こさないよう安全運転に努めることも大切です。日々の運転へ「補償運転」を取り入れて危険を回避しましょう。

補償運転とは加齢による運転能力の低下を補うために、自分の体調や運転能力、天気や明るさ、道路状況などを考慮し、危ない運転場面を避けて運転する事です。例えば「夜は目が見えにくいから運転を控える」など今まで以上にゆとりを持って運転ができるようルールを決めると良いでしょう。

 

他にも高齢ドライバーが運転を続けるための対策をご紹介します。

2407_2_3.png・運転教習所などで講習をうけ、第三者視点で適切な指導を受ける

・ドライブレコーダーを活用して自分の運転を見直す

・衝突やブレーキ踏み間違いを回避できる「サポカー」への乗り換え

 

運転免許の自主返納

2407_2_4.pngここまで紹介した対策を講じても運転への不安が解消できない場合には、運転免許を自主返納して運転をやめる検討も必要です。

自主返納すると運転経歴証明書の交付を受けることができ、免許証に代わる公的本人確認書類として利用することができます。ただし、自主返納後5年以上または運転免許失効後5年以上経過した方、交通違反等で免許取り消しになった方は交付を受けることができません。

運転免許を自主返納された方を対象に、自治体によって様々な支援が行われています。愛知県の場合、運転経歴証明書の提示でタクシー代金や飲食店での割引などの特典が受けられます。

しかし、交通手段の限られる地方や郊外ではマイカーがないと買い物や通院など、生活に支障をきたす場合もあります。免許返納の前に、超小型モビリティ・自転車・シニアカーといった別の乗り物への乗り換えや、鉄道・バスなどの公共交通機関の状況を確認しておくことをお勧めします。別の乗り物へ乗り換える場合には免許が必要な場合があるので、返納前に検討することが重要です。

最後に

 少子高齢化社会の日本では、高齢ドライバーの数は増える一方です。そして人間誰しも加齢に伴う身体機能・認知機能の低下に逆らうことはできません。トレーニングで低下の速度を遅らせる、衝突防止機能付き車両に乗るなどの事故防止策はあっても、いずれ車を運転できなくなる時は来ます。このコラムをきっかけに家族や友人と運転について話し合い、ご自身やご家族の「カーライフの終活」について一度考えてみませんか。