車上荒らしの実態と対策

 車のパーツや現金などが狙われる車上荒らしは、車を所有するものとして注意したい犯罪です。警察庁が発表した2022年犯罪統計によると、1月~12月の自動車盗認知件数は5,784件で、前年比10.7%の増加が見られた一方、検挙率は45.6%と前年比3.7%減となり、計画的な犯行等で検挙されづらい状況が推測されます。そこで今回は、車上荒らしの手口や被害に遭った時の対応、被害を防ぐための対策についてお話したいと思います。

車上荒らしの手口

 車上荒らしの手口は時代とともに変化しており、近年ではスマートキーの特性を悪用したり、車内部の電子制御装置に侵入したりというものが目立ちます。
車上荒らしの主な手口としては、次の3つが挙げられます。

1:窓ガラスを割って侵入

2303_1_1.png 窓ガラスを割る方法は最もスタンダードな手口です。割れても目立たず、大きな音もしないことから、運転席・助手席横の三角窓が割られることが多いようです。窓ガラスを割り、ドアの鍵を開けて侵入した上で車内を物色することが多いですが、犯人によっては、鍵穴や配線に細工してエンジンを始動し、一度車ごと盗んでから目立たない所に移動した上で犯行に及ぶこともあります

2:リレーアタックによる侵入

1803_2.jpg リレーアタックは、スマートキー搭載車を対象としたもので、スマートキーが発する微弱な電波を受信し、車のロックを解除することで侵入する手口です。数人によって犯罪が行われることが多く、1人の犯人がまず車の持ち主のスマートキーに接近し、受信用の装置でスマートキーが発する電波を受信します。それを増幅して仲間に電波を送ることで、スマートキーを電子的にコピーし、最終的に車のロックを解除します。車両の盗難にも使われる手口です

3:CANインベーダー

2303_1_2.png CANインベーダーは、スマートキーの電波も使わない新しい手口です。車にモバイルバッテリー型の小型機器を接続して、制御用のコンピューター(CAN)に侵入し、ロックを解除したり、エンジンをかけたりします

 車上荒らしから狙われるものはカーナビやオーディオ機器、ETC車載器、バンパー、ドアミラーなど車内外問わず金目の物が多いです。車関連の物以外にトランクに放置しがちなゴルフバッグや、外から見て分かる財布、かばん、衣類などもターゲットにされやすいです。

車上荒らしに遭った時は

 万が一、車上荒らしの被害に気付いた場合するべき対応をご存知ですか。動揺しているかと思いますが、落ち着いて迅速に対応することが大切です。

1:警察への通報

 2303_1_3.pngまずは警察へ通報してください。1秒でも早く警察へ通報することで犯人の逃走を防げるかもしれません。捕まる可能性を少しでも高くするためにとても重要です。警察への連絡が終わった後も証拠保全のため、車両に入ることは避けたほうが良いでしょう。犯人につながる手がかりを消す行為につながりかねません。

2:盗まれたものの確認・手続き

2303_1_4.png 警察の検分が終わった後は、盗まれたものを確認しましょう。中でもすぐ確認するべきなのが、クレジットカードやETCカードの類です。これらは盗難後に不正利用される可能性があるので、カード会社に連絡をして利用停止申請を行ってください。この時、利用停止した時刻を覚えておき、盗難に遭ってから利用停止するまでの間に利用されていないか履歴を確認することも大切です。この確認で犯人の行動が掴めるかもしれません。

3:車両保険に関する手続きを行う

1803_10.jpg 任意保険の「車両保険」に加入している場合は、車の破損部分に対して保険金が支払われます。ただし、車上荒らしの被害に保険を使用する場合、契約内容によっては警察署への被害届提出が必要な場合があります。万が一申し出ていないと保険金が支払われないケースもあるため、被害届は必ず提出しましょう。
 また、任意保険の中の「手持ち品(身の回り品)特約」を付帯している場合は、車両破損部位の他に、カーナビやその他持ち物の損害や盗難についても保険金が支払われる可能性があります。どのような車両保険を契約したのかをしっかり確認し、申請するようにしましょう

車上荒らしの対策

 車上荒らしに遭わないためには、犯行に及びにくい車を目指すことが大切です。ここでは愛車を守るための対策をいくつかご紹介いたします。

1:車から離れる時は短時間でも施錠する

1803_4.jpg 「ちょっと離れるだけだから...」「目の届くところにいるから...」という気のゆるみが、車上荒らしのリスクを高めることになります。車両窃盗の20%近くは鍵をつけっぱなしにしていた、または近くに置きっぱなしにしていたことで起こると言われています。犯人は少しの隙をついて犯行に及ぶ可能性があるため、短時間車から離れる場合も鍵をかけるくせをつけるようにしましょう

2:イモビライザー搭載車を選ぶ

2303_1_5.png イモビライザーとはキーと車のIDが一致するとエンジンがかかるシステムの事です。イモビライザーをかいくぐる犯行方法もありますが、搭載車と非搭載車では犯行対象として選ばれる度合いも異なるかと思います。現代の車にはイモビライザーはほぼ標準装備されています

3:スマートキーを電波遮断できるケースに入れる

2303_1_6.jpg リレーアタックの対策として、スマートキーが発する微弱な電波を遮断する方法があります。金属製の缶に入れるだけで簡単に遮断できますが、カー用品店では普段持ち歩きやすい電波を遮るポーチや専用ケースが販売されていますので取り入れてみてはいかがでしょうか。

4:車庫に防犯カメラを取り付ける

2303_1_7.png 車上荒らしや盗難が起こりやすい場所は主に路上ですが、家の車庫や駐車場も例外ではありません。自宅車庫にも防犯カメラを設置するのも車上荒らしの抑止力になります。特に車庫や駐車場が人通りの少ない死角になりやすい場所の場合は、車上荒らしに狙われる危険が高まります。万が一被害に遭った時の証拠としても活用できますので、防犯カメラは有効な対策と言えます。
また、コインパーキングなどを利用する場合も防犯カメラが設置されている場所や、夜間も明るい場所など防犯対策が取られた駐車場を選ぶとよいでしょう。

5:防犯アイテムの活用

2303_1_8.jpg 犯人は盗みやすい車を狙うので、盗みにくい車にすることが有効です。例えば、ドアを開けると警報サインが鳴る防犯ブザーや、ハンドルロック、タイヤロックといった防犯アイテムは積極的に取り入れるようにしましょう

6:車両保険への加入

2303_1_8.png 車ごと盗まれる事態を除く車上荒らしの場合は、車両のどこかを破損させた状態で犯行に及んでいることがほとんどのため、車両保険未加入の場合は加入することをお勧めします。車上荒らしによる被害は、自動車保険のうち車両保険と手持ち品(身の回り品)特約による補償の対象となります。

最後に

 車上荒らしの犯人は、とにかく短時間で犯行に及ぼうとします。そのため、物が盗まれるだけでなく車そのものが破壊されることもあり、被害が想像より大きくなりがちです。ここまでご紹介してきた対策はもちろんですが、車に貴重品を置かない、駐車する時は明るく人目につきやすい場所を選ぶといった基本的な防犯対策を忘れずにお願いします。また、車両保険の加入状況を確認・見直し、いざという時のための備えも忘れないようにしましょう。