最近新たなパーソナルモビリティとして電動キックボードが注目されています。電動キックボードは世界的にも市場が拡大しており、日本でも電動キックボードのシェアリングサービスや、営業活動の移動手段に活用する企業も現れています。そこで今回は電動キックボードについて、法的位置づけや導入のメリット・デメリットなどについてお話ししたいと思います。
電動キックボードは車両
2023年1月現在、電動キックボードは道路交通法上で「車両」に該当し、電動式モーターの定格出力に応じた車両区分に分類されます。電動式モーターの定格出力が0.06kw以下の電動キックボードは、道路交通法上の原動機付自転車(道路運送車両法上の第一種原動機付自転車)に該当します。そのため、毎年軽自動車税の納税が必要になります。
また通常の動力を持たないキックボードとは異なり、運転するには義務付けられている項目があります。
電動キックボードを運転するには
電動キックボードの運転には以下の内容が義務付けられており、違反すると罰則が適用されます。
1:運転免許が必要
道路交通法の車両区分に応じた運転免許が必要になります。免許がない状態で運転すると無免許運転となります(3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)
2022年4月に電動キックボードに関する道路交通法改正案が衆議院で可決され、「16歳以上という年齢制限をクリアすれば免許不要になる」という内容が決まりました。しかし、いまだ改正道路交通法は施行されておらず、現状では運転免許が必要です。
改正道路交通法は、2024年4月ごろに施行されるのではないかと予想されています。
2:原則車道通行、ヘルメット着用義務がある
道路を通行する際は車道を通行し、歩道を走行することはできません。走行時は車両区分に応じた通行方法に従う必要があります。また、ヘルメットの着用が義務付けられています。
一部の電動キックボードシェアサービスではヘルメットが不要な場合がありますが、これは地域と連携した実証実験のために例外的に運転できるものです。
3:制動装置・前照灯・後写鏡を備えている
道路運送車両法の車両区分に応じた装置が必要になります。制動装置、前照灯、後写鏡等の構造や装置について、車両区分に応じた保安基準に適合しなければ運行の用に供することができません。(整備不良車両運転 罰則:3月以下の懲役又は5万円以下の罰金)
4:自賠責保険契約の締結
自動車損害賠償保障法に基づき、自動車損害賠償責任保険又は自動車損害賠償責任共済の契約が締結されていなければ、運行の用に供することができません。無保険の場合罰則が適用されます(無保険運行 罰則:1年以下の懲役又は50万円以下の罰金)
任意保険については強制ではありませんが、万が一に備えて加入しておくのが良いでしょう。電動キックボードの任意保険は現状では専用の保険商品がないため、原動機付自転車用の保険や自動車保険にファミリーバイク特約を付加することになります。
5:標識(ナンバープレート)の設置
道路運送車両法の車両区分に応じた標識(ナンバープレート)を取り付ける必要があります。
電動キックボードのメリット・デメリット
ここまで電動キックボードの概要を説明しましたが、ここからは導入のメリット・デメリットについてご紹介いたします。
メリット
1:コンパクトで置き場が確保しやすい
最大のメリットはそのコンパクトさです。重さは20kgほどありますが、専用ケースを用意すれば折りたたんで電車移動もできます。また、自転車とは違い部屋で管理もしやすい大きさで、盗難リスクも軽減できます。
2:騒音や排気ガスがない
電動キックボードは充電して使用するため、ガソリンなどの燃料は不要です。排気ガスを出さないので、エコな乗り物とも言えます。またモーターはエンジンと比べて振動や騒音が小さく済みます。
3:価格が安い
公道を走行できるタイプは10万円台前半からと、電動アシスト付き自転車とほぼ同じぐらいの価格から購入することができます。さらに1km走る燃料代は原付バイク(ガソリン)が2円に対し、電動キックボードはわずか0.4円と経済的です。
デメリット
1:長距離移動には不適
フル充電で30~40km程度しか走行できないため、長距離の移動に適した乗り物ではありません。片道3~5km、ちょっとした買い物などの移動に使う乗り物と考えておくのが良いでしょう。また、通行量の多い国道などを走るのにも適していません。
2:速度が遅い
ガソリンの原付バイクと比べると、電動キックボードは最高速度で劣ります。時速20kmしか出ないものもありますし、速いものでも40kmが限界です。また、ギアがないので上り坂は苦手な乗り物です。
3: 路面の衝撃を受けやすい
電動キックボードは軽くて便利ではありますがその性質上タイヤが小さく、段差や障害物に対して弱い点があります。走行中の衝撃を非常に受けやすいため、バランスを崩して転倒など事故に巻き込まれる危険も高くなっています。また、このような理由から、路面状態の悪い雨・雪などの日の使用も難しいと言えます。
最後に
悲惨な事故や危険運転の報道も多く、電動キックボードは「危ない乗り物だ」という認識の方も多くいらっしゃると思います。ですが、日常はもちろん観光地などでの「ちょっとした移動」の手段として有効活用できる可能性のある乗り物でもあり、様々な自治体でシェアリングサービスの実証実験も行われています。
海外では法整備を整え、シェアリングサービスが普及している国もあるようです。今後電動キックボードが普及するには、新しいモビリティサービスのかたちとして国内の交通状況にあった法整備が必要になるでしょう。今後法整備が整い安全に電動キックボードを利用できるようになれば、私たちの生活がより便利なものになるかもしれません。