2022年3月、運転免許証とマイナンバーカードの一体化について盛り込んだ道路交通法改正案が閣議決定され、2024年度末の運用を目指して整備が加速していくこととなりました。こうした改革によって生じるメリット・デメリットはどのようなものでしょうか。今回は運転免許証とマイナンバーカードの一体化によって生じる影響についてお話したいと思います。
マイナンバーカードとは
2013年5月から運用開始されたマイナンバーカードは、12桁の数字によって個人を証明する身分証明書としての役割を果たしています。同じく顔写真付きの身分証明書として、運転免許証やパスポートがありますが、交付に費用が掛かります。しかし、マイナンバーカードは誰でも原則無料で取得できます。様々な場面で顔つきの身分証明書を求められるシーンが増えた今、マイナンバーカードは比較的手軽に入手できる顔つき身分証明書と言えます。
顔写真付きの身分証明書という役割以外にも、マイナンバーカードが使える場面が増えています。
代表的なものは以下の通りです。
運転免許証との一体化についてはあくまで申請制で希望者のみですが、2022年10月13日に行われた会見で、デジタル庁の河野太郎大臣は「2024年度末の運用」をさらに前倒しできないかといったことを警察庁と検討中であると話し、政府が運用を推進しようとしていることは明らかと言えます。
運転免許証との一体化で生じるメリット・デメリット
運転免許証とマイナンバーカードの一体化によって、私たちの生活はどのように変わるのでしょうか。メリットとデメリットを解説します。
メリット
1:手続きのワンストップ化が可能
各種手続きがワンストップで行えることは、一体化最大のメリットです。例えば引っ越しした場合には住所変更手続きと運転免許証の住所変更手続きが必要ですが、一体化することでマイナンバーカードの住所変更手続きを行えば、運転免許証の住所変更手続きは不要になります。
2:更新期限が延びる
現在運転免許証の更新手続きは、運転免許証に記載されている居住地以外での更新期限が誕生日当日までになっています。しかし、マイナンバーカードと一体化させることにより、居住地以外での免許更新期限が誕生日から1か月後までに延長されます。
3:手続きが全国どこでも可能に
運転免許証の発行・更新などの手続きが全国どこでも行えるようになります。現在は発行・更新をする場合は、運転免許センターや警察署へ行く必要があります。受付曜日や時間などが限られているため、そのために仕事を休むという方もいらっしゃると思いますが、その必要がなくなるのは便利になると言えます。それだけでなく、運転免許センターでのマイナンバーカード発行ができるような検討もされているようです。
4:手続きのオンライン化
政府は現在総務省における行政手続きのオンライン化を進めています。その中で、免許更新時に過去5年間無違反などの条件を満たす優良運転者を対象とする講習のオンライン受講など、運転免許に関するオンライン化、デジタル化が現在検討されています。
デメリット
1:更新の手間が増える場合がある
免許証と一体化したマイナンバーカードと運転免許証を併用している場合は、それぞれどちらも更新する必要があります。マイナンバーカードと一体化させた場合には両方保有するケースは少ないかもしれませんが、注意が必要です。
2:個人情報漏洩
マイナンバーカードの運用開始から指摘されており、マイナンバーカード取得率が伸び悩む原因でもあります。個人情報が一元管理されることは便利でもある反面、当然リスクも伴います。
3:車検証はデジタル化されない
マイナンバーカードは運転免許証と一体化しますが、車検証は対応していません。車検証も2023年1月4日以降から電子車検証に切り替わるとされていますが、これにマイナンバーカードは含まれていません。車のダッシュボードなどに入れている方が多いのでよほど心配はないと思いますが、車検証は従来通り携帯する必要があります。
4:再発行に時間がかかる
マイナンバーカードを紛失した場合の再発行には約1ヶ月かかり、さらに役所へ取りに行く必要があります。運転免許証と一体化をさせることによって、マイナンバーカード紛失で1ヶ月車に乗れなくなる、再発行を待つ間の代替の身分証明書がなくなるという課題も懸念されています。
最後に
運転免許証とマイナンバーカードの一体化には課題点も多いですが、デジタル化によって便利になることがあるのも確かです。すでにマイナンバーカードと一体化が可能になっている健康保険証は2024年秋ごろに現行の健康保険証が廃止されることが明らかになっており、運転免許証についても将来廃止される可能性がないとは言い切れません。政府が推進する行政サービスのデジタル化については、私たちも動向を注意深く見守る必要がありそうです。