2020年9月25日、国土交通省は「『持続可能な国土幹線道路システムの構築に向けた取り組み』中間とりまとめ」を公表しました。この中で高速道路等のキャッシュレス化・タッチレス化を推進すべきであると示し、各高速道路会社では2020年12月に高速道路のETC専用化に向けた計画を発表しました。そこで今回は、高速道路のETC専用化に向けての動向についてお話したいと思います。
ETCの利用状況と今後の計画
全国のETC利用率は年々増加しており、2021年9月時点で93.5%になりました。利用率拡大や新型コロナ感染症による非接触決済の増加など社会情勢の変化を踏まえ、各道路会社では2030年までのETCへの完全移行を計画しています。
中でも2021年現在で全車平均96.8%と高いETC利用率を誇る首都高速ではいち早く2022年3月1日から5か所で先行実施し、4月1日に29か所、既存の入口がETC専用に変わります。すでにETC専用になっている入口を加えると35か所がETC専用になり、2025年度中までに約9割(約160か所)まで拡大する予定です。
移行に伴う問題点
ETC専用へ移行することでの一番の問題は、ETC非搭載車(現金車)の扱いです。首都高速のケースでは3月に5か所の入口がETC専用に切り替わることで、現金車用の代替の入口を設定していますが、代替の入口が元の入口から大きく離れてしまうケースもあるようです。首都高速道路株式会社は、一気にETC専用へ切り替えず、3月に5か所実施する入口での運用状況から必要な対応を検討するとしています。また、首都高速では4月1日から料金改定が行われ、現金利用では車種に応じた上限額(普通車で1,320円から1,950円へ値上げ)を支払うことになり、現金利用はETCより価格面でも不利になります。
首都高速の料金改定
現金利用の場合、車種に応じた上限額を支払うことになる。
車種区分 | 現行料金(下限額~上限額) | 2022年4月1日からの料金 (下限~上限額) | |
---|---|---|---|
右記以外 | 東名⇔北西線連続利用 | ||
軽・二輪 | 280円~1,090円 | 280円~1,490円 | 280円~1,590円 |
普通車 | 300円~1,320円 | 300円~1,800円 | 300円~1,950円 |
中型車 | 310円~1,410円 | 310円~1,920円 | 330円~2,310円 |
大型車 | 460円~2,650円 | 400円~2,870円 | 400円~3,110円 |
ETC専用入口への現金車誤侵入に対しての対策として、ETC専用となる入口の料金所では新たにサポートレーンが作られ「一般」または「ETC/一般」のレーン表示が、「サポート」「ETC/サポート」に変わります。ただし、首都高速のサポートレーンでは現金は一切使用できず、後払い精算の案内をするとのことです。
現金車に対する対応については、高速道路会社によって若干異なるようです。中央道の稲城ICと圏央道の八王子西ICと相模原ICをETC専用とするNEXCO中日本では、サポートレーンになっても大きくは変わらないとしています。サポートレーンは誤侵入に対応する場ではあるものの、現金精算機を設けるそうです。しかしいずれはナンバーをカメラで読み取り、判明した車両から料金を事後徴収する手順が検討されており、将来的にはリモート・無人運用の方向へ進んでいきそうです。
ETC普及促進策
2030年の高速道路ETC完全移行を目指し、各高速道路会社ではETC普及に向けたあらゆる取り組みを検討しています。クレジットカードを持っていないドライバーでも作れる「ETCパーソナルカード」のデポジット下限引き下げ(2万円から3,000円)の検討や、ETC車載器の購入助成といった利用のハードルを下げる取り組みも実施されています。購入助成については、2022年1月27日~6月30日まで全国24万台限定で車載器価格から最大10,000円の割引が受けられます。詳しくは専用サイトをご確認ください。
最後に
感染リスク軽減以外にも、料金収集や管理コストの削減、料金収受員の人員確保が困難といった様々な要素から高速道路のETC専用化は避けられない流れと言えます。ETC非搭載の車両をお持ちの企業では、今後の運用を検討する必要がありそうです。車両管理者の皆さんはこの機会に保有車両のETC車載器搭載や高速道路の利用状況を一度把握してみてはいかがでしょうか。