安全に走行する為には人の運転技術や判断能力に頼っている部分が多いといっても過言ではありません。しかし、その能力の習得には多くの経験と長い年月が必要とされています。それを改善すべく開発されているのがドライバーを支援する最新システム「先進安全自動車(ASV)」の存在です。今回は運転する全てのドライバーの安全運転をサポートする為に生まれてきたASVについてご紹介します。
先進安全自動車(ASV)の基本的な考え方
国土交通省の「ASV推進計画」ではASVの技術の実用化や普及促進、技術開発のための案件として「基本理念」と「運転支援の考え方」を策定しています。ここではASVの基本的な考え方をご紹介します。
1:ドライバーを支援する技術
●安全運転の主体はドライバーでありASVはそれを支援するもの
●ドライバーに過信を招かせないように配慮した設計にすること
2:ドライバーが安心して使える技術
●ドライバーが、システムの作動状態を確認できること
●システムが行う制御にドライバーが介入できること
3:社会から受け入れられること
●安全性が後退しないこと
●他の車や歩行者から理解されること
各機能の紹介
ASVにはどんな技術があるのでしょうか。ここでは先進安全技術の一部をご紹介します。
1:衝突被害軽減ブレーキ
車両相互事故で最も多い形態が追突事故です。衝突被害軽減ブレーキは、追突事故の被害を軽減または回避することを目的とした先進安全装備です。衝突被害軽減ブレーキは、車の前部に取り付けられたセンサーが前方の車や障害物を検知し、衝突の危険が高まると警報としてドライバーに音や警告灯で回避行動を促します。このときドライバーが回避行動を行わない場合、ドライバーに代わり自律自動ブレーキを作動させます。
2:ペダル踏み間違い時加速抑制装置(誤発進抑制制御機能)
駐車場へ入出庫を行う際、ブレーキペダルを踏まなければならない状況で誤ってアクセルペダルを踏んでしまうことがあります。ペダル踏み間違い時加速抑制装置(誤発進抑制制御機能)は車載のセンサーが障害物を認識している状態で誤ってアクセルペダルを踏み込んでしまった場合、警告音でドライバーにブレーキ操作を促し、同時にエンジンの出力を抑え、数秒間、急発進を抑制する先進安全装備です。衝突が避けられないとシステムが判断した場合には、自動的にブレーキ制御が行われる車種もあります。
3:車間距離制御装置(ACC)
長距離を走行する場合、前の車との間隔を自動的に維持して走行することにはさまざまなメリットがあります。車間距離制御装置は、車の前部に取り付けられたセンサーが前の車を認識し、システムがアクセル操作とブレーキ操作を行なうことで車間距離を一定に保ち、「ドライバーの疲労軽減」および「安全車間の確保」、「サグ部分での減速を防ぐことによる渋滞緩和」に貢献します。
4:車線逸脱警報装置
自動車を運転中、スイッチ類の操作などで無意識のうちにハンドルが動いてしまうことがあります。車線逸脱警報装置は、ドライバーが無意識のうちに車線をはみ出しそうになったとき、ドライバーに警告し、正しい位置に戻ることを促すことによって安全運転を支援します。車の前部に取り付けられた光学式カメラセンサーは、道路上の白線(黄線)を認識します。車線をはみ出しそうになると、音や警告灯などによってドライバーに知らせます。
5:リアビークルモニタリングシステム
自動車にはミラーでは見えない死角が左右の斜め後ろに存在します。リアビークルモニタリングシステム(後側方接近車両注意喚起装置)は、この死角に他の車がいることをドライバーに知らせ、目視不足によって発生する事故を防ぐことを目的としています。センサーは車の後部側方に取り付けられており、ドライバーの死角になる斜め後方の車を検知します。ドライバーがこの車に気付かず車線を変更しようとしたとき、インジケーター表示や警報ブザーでドライバーに危険を知らせます。
6:自動切替型前照灯
夜間の走行はハイビームが基本です。自動切替型前照灯は、ロービームからハイビームへの切り替え忘れを防ぎ、ドライバーの前方視界の確保をアシストします。車の前部に取り付けられた光学式カメラセンサーによって、周囲の明るさを認識し、ハイビームとロービームを状況に応じて自動で切替える先進安全装置です。走行中のハイビームの使用は、歩行者や障害物の早期発見につながり、夜間の事故防止に効果があります。また、ハイビームで走行中、前走車や対向車の存在を光学式カメラセンサーが認識した場合は、自動的にロービームへと切替え、眩惑を防止します。
ASVの今後は?
ここまでASVの機能について紹介しましたが、ASV推進検討委員会では、自動運転の普及を念頭に置いた「第6期推進計画」に着手しています。具体的には基本理念のひとつである「ドライバー支援の原則」の見直しが検討されている最中です。
主な検討項目は
・ドライバー異常時対応システム
・高レベル自動運転車普及に伴う影響
・無人自動運転サービスの早期実現
・ISA(自動速度制御装置)と自動運転との連携強化
などのほか、各社バラバラになっているASVの名称・定義・機能などを統一化することで、「ドライバー・社会受容性の確保」という基本理念の浸透・普遍化を推し進める方針です。
最後に
ドライバーの皆様や皆様の大切な方の人生を守る為、ASVの技術は今この瞬間も開発され、日々進歩しています。冒頭の「基本的な考え方」でお伝えした通り、ASV技術はあくまでも安全運転を支援するためのものであり、ハンドルを握るのはドライバー自身であることに変わりはありません。機能を過信せず、常に安全運転を心がけましょう。
キムラユニティーでは皆様と共に事故ゼロの未来を目指し、ドライバー様への安全教育や安全性を重視した車選びまでトータルでアドバイスさせていただいております。