警察庁は一定台数の白ナンバー車を保有する事業者へ運転前点呼やアルコールチェックを義務化する、道路交通法施行規則の改定案を発表しました。2022年4月の施行を目指しているようですが、どのように変わるのでしょうか?今回は改正のポイントと車両管理のポイントについてお話したいと思います。
対象となるのは?
今回対象となるのは、道路交通法で「安全運転管理者選任事業所」として規定されている企業や団体です。安全運転管理者選任事業所とは、乗用車5台以上、または定員11名以上の車両1台以上を保有している事業所の事を指します。条件にあてはまる事業所は、安全運転管理者を選任して警察へ届け出る必要があり、車を運転する従業員に対しての安全教育や運行管理などの義務が課せられます。
改正のポイント
今回の改正では、次の内容が義務付けられる予定です。
1:安全運転管理者は、社員が運転した前後に酒気帯びの有無を目視で確認する
2:アルコール検知器を使って確認を行う
3:確認した記録を帳簿やデジタルデータで1年間保存する
4:いつでも正常に機能するアルコール検知器を備える
今回の改正は2021年6月に千葉県八街市で小学生5名が大型トラックにはねられて死亡した事件を受けたものです。加害者は有償で顧客の荷物などを運ぶ「緑ナンバー」でなく、自社の荷物を運ぶ「白ナンバー」のトラックを飲酒した状態で運転していました。
緑ナンバー車を保有する事業者に対してのアルコール検知器を使用した検査はすでに義務付けられており、違反した事業者には車両使用停止等の厳しい罰則が科せられています。そして今回、白ナンバー車に対しても運転前後のアルコール検知器による飲酒チェックが義務付けられる形となりました。
罰則についてですが、安全運転管理者がこれらの業務を実施しないことで都道府県公安委員会は安全運転管理者の解任命令を出すことができ、5万円以下の罰金が科せられます。先に運用が始まっている緑ナンバー事業者向けの内容と比較すると罰則が軽いように思えますが、警察庁によると安全運転管理者選任事務所は全国に約34万件、その管理下にあるドライバーは約782万人いると言われています。対象数が多く注目度は高いため、違反時の社会的失墜は大きいと想定されます。
緑ナンバー事業者との罰則比較
緑ナンバー事業者 | 白ナンバー事業者 | |
---|---|---|
罰則内容 | ●車両使用停止処分 (初違反60日、再違反120日) ●国土交通省ホームページに事業者名の公開 |
●安全運転管理者の解任命令 ●5万円以下の罰金 |
実施日 | 2011年5月1日より実施中 | 2022年4月1日(予定) |
管理する上でのポイント
ひとたび飲酒運転による事故が発生すれば運転者だけでなく企業責任は大きく問われます。今回対象になる安全運転管理者の皆さんは車両の運行管理や運転者教育などの体制を整えるチャンスととらえ、これを機にアルコール検知を含めた車両・運転者管理のポイントについて考えてみましょう。
1:運転者への周知徹底
安全運転管理者の業務の中には「運転者の安全運転指導」があります。今回の改正についても、実際に運転をするドライバーの協力なくしては上手な運用はできないでしょう。そこで事前に運転手にも理解してもらう必要があります。法改正の内容についてはもちろん、飲酒が運転に与える影響もしっかり伝えましょう。特に翌日車を運転する場合にはそれを考慮した飲酒時間、飲酒量を心掛ける必要があることは伝えましょう。それは飲酒時間・飲酒量によっては翌朝体内にアルコールが残り、運転前のアルコールチェックで規定量をオーバーして乗務できなくなるという可能性もあるからです。
2:車両管理のIT化
今回の改正案ではアルコール検知器による酒気帯び確認を1年間記録保管する必要があります。そこで運転日報の内容を見直すと同時に、管理方法の見直しをしてはいかがでしょうか?
今では運転日報も手書きやエクセルシートへの入力ではなく、クラウドシステムやアプリを導入する企業が増えてきています。ドライバーから入力されたデータの集計やグラフ化も簡単で、管理者側・ドライバー側双方の業務効率化が可能となります。クラウドサービスやアプリには運転日報の作成以外にも車検や点検、免許証といった項目の管理を支援する機能も多く備わっています。多くがスマホやパソコンなどの身近な端末から始められ、少ない初期コストで始められます。自社の車両管理の効率化に検討をオススメします。
また、導入費用は掛かりますがテレマティクスを導入すれば、車載器から車両の運行情報を収集して自動で運転日報を生成できるサービスもあります。
最後に
今回の改正法案について警視庁はパブリックコメントを2021年10月2日まで求めています。影響のある安全運転管理者や車両管理者の方で意見のある方はぜひコメントを寄せてみてはいかがでしょうか。 飲酒運転は違法行為であり、飲酒が引き金となる痛ましい交通事故は絶対にあってはなりません。安全運転管理者と運転手が「飲酒運転を絶対しない・させない」という意識を強く持ち、飲酒運転ゼロの社会を目指しましょう。