企業の車両管理者として所有車両の状態は常に適正に保つ必要があります。その為に必要なのが、「法定点検」です。車の点検には車検・定期点検・日常点検の3種類があります。この中で車検は「車検切れ」を起こした車で公道を走ると罰則が発生するため、継続して車を使用する場合に必ず受ける必要がありますが、法定点検とは一体どんなものなのでしょうか。そこで今回は車の法定点検についてお話しようと思います。
法定点検とは
法定点検とは、自家用自動車の場合12ヶ月点検・24ヶ月点検の事をいい、車検と同様に道路運送車両法で義務付けられているものです。24ヶ月点検は車検と同様に2年に1度の頻度で実施するため、車検と併せて行われます。
車検と法定点検の違いは検査目的の違いにあります。法定点検が「故障や不具合がなく快適に走れるか確かめるための検査」なのに対し、車検は「車が保安基準に適合しているかを確かめるための検査」であり、チェックする項目も異なります。保安基準とは、道路運送車両法に定められる規定のことで、車の構造や装置、乗車定員といった項目が挙げられます。
また、バスやトラック、レンタカー等の事業用車両の場合は法定3ヶ月・6ヶ月といった自家用車よりも短いスパンでの点検が義務付けられています。
法定点検の種類
対象自動車 | 定期点検の時期 | 点検項目数 |
---|---|---|
自家用乗用車、軽自動車 | 12ヶ月点検 | 26項目 |
24ヶ月点検 | 56項目 | |
中小型トラック(自家用) レンタカー(乗用車) |
6ヶ月点検 | 22項目 |
12ヶ月点検 | 82項目 | |
バス、トラック、タクシー(事業用) 大型トラック(自家用) レンタカー(乗用車以外) |
3ヶ月点検 | 50項目 |
12ヶ月点検 | 99項目 |
法定点検を受けるメリット
法定点検を正しく受けることで受けられるメリットは主に3つあります。
1:トラブル予防につながる
最大のメリットは、整備不良や不具合による車のトラブルを未然に防げることです。法定点検を受けていると点検項目に該当する箇所の不具合や故障が起きた場合、メーカー保証を受けることができます。メーカー保証を受けられることで、修理費用の高額化を抑えられます。(ただしユーザーの重過失は除く)
2:整備不良による事故で法的責任軽減の可能性がある
国の認証を受けた整備工場で法的点検を実施したにもかかわらず整備不良等に起因する事故が発生した場合、ドライバーの法的責任が軽減される可能性があります。法定点検実施の証明となる点検整備記録簿は、大切に保管しておきましょう。
3:下取・買取時の査定評価が上がりやすくなる
点検整備記録簿へ法定点検の記録を残しておくと、車を売却する際の査定評価が上がりやすくなります。同じ年式・走行距離でも定期点検を受けた車の方が過去の整備履歴が把握でき、安心感が高いためです。
法定点検で注意したいポイント
1:実施期限はいつまで?
車検には満期日がありますが、法定点検には満期日はありません。実施すべき日の前後1ヶ月以内の実施がオススメです。ディーラーや整備工場等から案内が届くと思いますので、それを目安に予約を入れましょう。
点検を実施する目安に確認していただきたいのが、フロントガラスに貼り付けられる「ダイヤルステッカー」です。ダイヤルステッカーは円形のシールで、法定検査の実施日や次回の検査時期の目安が記載されています。なお、このステッカーは国の認定を受けた整備工場で、プロの整備士が法定点検を実施した時のみ貼り付けられます。
2:受けないとどうなる?
車検と同時に実施される24ヶ月点検と違って、12ヶ月点検は受けるタイミングを忘れてしまいがちです。法定点検を受けていないと何かあるのかとお思いの方もいるかもしれませんが、法定点検は未実施でも罰則は課せられませんし、ある程度知識のある方であれば自分で点検をすることもできます。ですがこの場合ダイヤルステッカーは入手できません。
ただし、企業として車両を保有・管理している場合には、法定点検を忘れずに受ける事はコンプライアンスの観点でも重要になりますので、国の認証を受けた整備工場で必ず受けるようにしましょう。
3:必要なものはなに?
法定点検で必要なものは車検証と検査費用のみです。ただし、24ヶ月点検と車検を同時に受ける場合は、車検で必要な持ち物(自動車納税証明書、自賠責保険証、ロックナットを使用している場合はロックナットアダプター)が必要になります。
最後に
車を良好な状態で長く乗るためには、定期的なメンテナンスは欠かせません。車検や法定点検はもちろんの事、運転者自身で出来る日常点検も行うとなお良いでしょう。トラックやバス等の事業用自動車では毎日の運行前点検が義務付けられていますが、一般的な社用車(自家用自動車)でも1日1回と言わずとも定期的な日常点検は実施しておきたいものです。
整備不良を放置することでドライバー自身はもちろん周囲を走る車や歩行者等にも危険が及び、企業の車両管理責任を問われることになります。車両管理者は車両の点検管理・車検満期管理を適切に行い、管理車両の状態を常に良好に保つよう努めましょう。