3月になり、あと1ヶ月もすると新入社員が入社しますが、新入社員に対する安全運転教育や事故対策の準備はされていますか。最近では「若者のクルマ離れ」が進み、ペーパードライバーも多いと言われています。新入社員の交通事故を防ぐためにはどのような教育をすればいいのでしょうか。そこで今回は、新入社員が起こしやすい事故とその教育方法についてお教えしたいと思います。
20代の交通事故は高齢者よりも多い!
警視庁交通局が発表した「年齢層別人口10万人当たり負傷者数の推移」から分かるように、負傷者数が一番多いのが20代です。この負傷者数には加害者と被害者の双方が含まれますが、いずれにしても20代が交通事故発生に係わる割合が高いということを示しています。
また負傷者数の推移という面から見れば、全体と同様に減少の流れとなっていますが、年代層別の順位としてはこの10年間、毎年ワースト1となっています。たとえば2017年(平成29年)度においては、高齢者層70代と比べても実に2.7倍というのが現状です。
さらに、「事故発生時の状態別、年齢層別の人口10万人当たり負傷者数」からは"20代の自動車乗車中"の数が多くなっていることが分かります。70代ドライバーよりも20代ドライバーの負傷数が3.5倍も多いということは注目すべき点ではないでしょうか。
若年ドライバーによる交通事故の傾向
若年層の交通事故数をここまで見てきましたが、若年ドライバーが起こしやすい事故の傾向とはなんでしょうか。日本製薬工業協会によると2010年度に医薬品会社にMRとして入った新入社員の入社前の運転状況をみると、「ほとんど運転しない」「月1運転」という運転経験の浅い人が約6割という結果でした。このように若年層のドライバーは免許があっても運転経験が少ない方の割合も低くありません。運転経験が少ないと運転に不慣れで、運転に対して不安を抱えた状態に陥りがちです。
また、若年層のドライバーによる主な事故状況を調査すると、十分な安全確認を怠る「安全不確認」や運転中に視線を逸らす「わき見運転」、周囲への注視を怠る「動静不注視」の件数が多くなっています。グラフを見ると、若年ドライバーの約8割が安全運転の義務に違反して事故を起こしている事が分かります。運転経験の少ない若年ドライバーは交通場面での危険を知らず、安全確認の対象や方法が分かっていない状態であるとも言えます。また、それを分かっていたとしてもその通りに運転できているとは限りません。
運転の正しい知識を覚えてもらい運転に対する不安を取り除くためにも、安全運転の指導が重要なのです。
新入社員への運転教育のポイント
安全運転の指導はどのようにすればいいのでしょうか。若年ドライバーの事故傾向をみると、運転経験の浅い新入社員には「危険を知り、安全確認の対象や方法を覚える」「その通りに正しく実践する」ことを指導しなくてはなりません。そこで、運転教育のポイントをお教えします。
1:安全確認すべき対象を教える
信号のない交差点等で「人も車も来ないからそのまま進行しよう」と安易に判断すると大きな事故に繋がる危険性があります。新入社員に先にある危険を知ってもらうために、様々な交通場面で「危ない」と思った経験談を交えながら教えましょう。例えば信号のない交差点で「人や自転車、車が交差する道路では急に飛び出してくる可能性がある」と安全確認すべき対象を教えましょう。常に「危険が潜んでいるかもしれない」とその先の危険を予測して運転指導しましょう。
2:声を出して安全確認を行わせる
声出し確認は、新入社員が安全確認すべき対象をはっきりと意識させる手助けとなります。確認すべき対象を理解しないまま目視だけで確認していると、「何となく確認した」という習慣がついてしまい、見落としが発生する危険性があります。「対向車が来ない」「周囲に人がいない」ことを、目で見てしっかりと「対向車よし」「歩行者よし」と声に出して安全確認するように指導しましょう。
3:運転に集中できる環境を作る
1秒にも満たないわき見が事故に繋がります。ながら運転は道路交通法違反になるので、ナビや携帯電話の操作は車を停めてから操作するよう指導しましょう。運転の途中で携帯電話が鳴ると、どうしても運転から注意がそれてしまいます。運転中はドライブモード(公共モード)に設定してカバンなどに入れ、運転に集中できる環境を作るよう指導しましょう。
4:時間に余裕を持ったスケジュールを立て、早めに出発するよう指導する
安全に不慣れなうえ、運転経路を把握していなかったり、時間の余裕がないと必要以上にあせってしまいます。焦ると安全不確認やハンドル操作を誤るなどして事故を起こしやすくなります。時間に余裕を持った移動スケジュールを立てて、早めに出発するように指導しましょう。
新入社員が運転に慣れるまでは同乗し、これらの安全運転のポイントを伝えるようにしましょう。運転前に必ず「不安な事や難しいと思うことがないか」をたずね、新入社員の話をよく聞くようにしましょう。
最後に
ここまで運転指導のポイントをお伝えしましたが、新入社員には自分の運転行動は周囲から見られていると意識させるようにしましょう。事故に至らずとも普段の運転マナーが悪いと「あの会社は運転が乱暴だ」と噂が広がり、企業イメージの低下に繋がります。車体に社名が入っていなくてもユニフォームや荷物などで会社名が分かってしまう事もあります。さらに最近ではSNSを通じて不名誉な情報が投稿・拡散されてしまう可能性もあるので、注意を払うようにしましょう。
法令順守し、ゆとりある丁寧な運転を行うことは、企業イメージ向上にもつながります。新入社員には企業ドライバーとしての自覚と責任感を持たせるよう、安全運転管理者はもちろん先輩社員も含めて、後輩を育成・指導していきましょう。