交通事故を起こした時に付き物の「過失割合」ですが、皆さんはその考え方や決定方法をご存知でしょうか。過失割合の考え方は一般の方には難解な部分もありますが、基本だけでも理解していると保険会社とのやり取りを円滑に行うことができます。そこで今回は、過失割合と過失相殺について解説しようと思います。
過失割合とは
過失割合とは、自動車事故を起こしてしまった際に対する責任のことです。当事者双方に過失がある事故の場合、通常は過去の裁判事例を基準として契約している保険会社が話し合い、過失割合を決定します。それぞれ下限は0、上限は100です。
ここからは具体例を交えてご説明します。
例えば信号機のある交差点にお互い青信号で進入した直進車と対向右折車が衝突した事故の場合、右折車に80%の過失があり、20%は直進車に過失があります。
理由として、道路交通法34条には車両等が交差点で右折する場合には、直進や左折をしようとする車両の進行を妨害してはならないと定められているためです。したがって、右折をするときには直進車が通り過ぎるのを待たなければなりません。つまり、当事例の場合、右折車は優先度が低くなるため、右折車側に80%の過失が発生するという理屈です。
しかしながら、直進車にも責任があり、道路交通法36条には交差点内は反対方向から進行してきて右折する車両等や、道路を横断する歩行者に特に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない、と記されています。今回の場合では、直進車から対向車が見えているので、対向車が右折してくる可能性を予測して運転する義務があります。この点において、直進車にも20%の過失が発生するというわけです。
今回は、直進車は20%で右折車は80%の過失割合になります。過失割合が大きい当事者は事故における加害者、一方で過失割合が小さい当事者が事故における被害者と呼ばれます。ただし、被害者といえども過失があると損害賠償額を支払う義務が生じます。被害者にも一定の落ち度がある場合は、たとえ被害者であっても責任は免れないというのが過失割合の基本の考え方です。
過失相殺とは
交通事故が発生する場合、その原因として不注意が考えられます。例えばわき見運転をして全車に追突してしまった場合は運転者の前方不注意が原因で事故が起きたと言えます。このような不注意の事を過失と言います。そして被害者にも過失が認められる場合、法律的観点では損害の公平な分担の観点から加害者に全ての損害を負担させる事は妥当ではないと考えます。
過失相殺とは、損害賠償額を算出する際に過失割合に応じて被害者側の過失額を加害者の負担すべき損害賠償額から減額することをいいます。
損害額について、人身事故の損害賠償額には、治療関係費(入院料、投薬料、看護料等)、休業損害(傷害の場合)、逸失利益(死亡・後遺障害の場合)、葬儀費(死亡の場合)、慰謝料などがあります。一方、物損事故の損害賠償額には、自動車や家屋の修理費などがあります。
いずれの場合も、損害費目ごとの損害額の積み上げによって総損害額が算出されます。
たとえば、道路外から道路に進入するために左折する車と道路を走行していた車が事故した場合は、左折した車に80%の過失があり、20%は道路を走行していた車に過失があります。
また具体的な損害額は以下の表のようになります。
左折した車 | 道路を走行していた車 | |
---|---|---|
過失割合 | 80% | 20% |
損害額 | 100万円 | 80万円 |
相手への損害賠償額 | 64万円 | 20万円 |
支払い額 | - | 44万円 |
今回の場合、左折した車は道路を走行していた車に対して、44万円を支払うことになります。
また左折した車が高級車の場合、被害者であっても損害額を請求される場合があります。
左折した車 | 道路を走行していた車 | |
---|---|---|
過失割合 | 80% | 20% |
損害額 | 500万円 | 80万円 |
相手への損害賠償額 | 64万円 | 100万円 |
支払い額 | - | 36万円 |
今回の場合、道路を走行していた車は左折した車に対して、36万円を支払うことになります。
その他にも車両の時価額が低い場合は、最大額が時価額となるので、損害額が補えない場合もあります。時価額とは、現在の車の価値を指します。
左折した車 | 道路を走行していた車 | |
---|---|---|
過失割合 | 80% | 20% |
損害額 | 500万円 | 80万円 |
時価額 | 1,000万円 | 40万円 |
相手への損害賠償額 | 32万円 | 100万円 |
支払い額 | - | 68万円 |
今回の場合、道路を走行していた車は左折した車に対して、68万円を支払うことになります。
このように過失相殺で過失額を減額することができます。
※本サイトに掲載しているのは基本過失割合であり、実際の事故では個々の事故状況を確認したうえで過失割合を協議し決定します。その為、掲載している基本過失割合と異なる結果となることもあります。
万が一への備え
対策としては、万が一に備えて任意保険に加入することを推奨します。損害保険料率算出機構「自動車保険の概況 2019年度版(2020年5月発行)」によると、自動車保険や自動車共済に加入している契約者は90%ほどです。ほとんどが加入されていると思いますが、契約内容など保証が確認できないことがありますので、一度契約内容の確認をしてください。特に事故対応時のサポートに関する内容はいざという時に役立つのでチェックしましょう。
最後に
自動車事故の過失割合の決定方法は様々なケースがあり非常に複雑ですが、その基本知識を知っておくだけで過失割合の交渉などに役立てることができます。今回のコラムを参考に、過失割合についての理解を深めていただけたら幸いです。そしてもちろん交通事故は起こさないに越したことがありません。安全運転を心がけ、事故を起こさないという意識を忘れずハンドルを握りましょう。