車の運転はその場の道路状況に応じて状況判断、操作を行うため、一瞬たりとも手休めあるいは息抜きを許されません。ですから、運転者は心身共に健康であることが大切です。それでも日々の生活で疲れやストレスは多かれ少なかれ溜まるものです。これらを蓄積させ、「過労状態」でハンドルを握った運転者が、悲惨な交通事故を招いているケースが後を絶ちません。
今回は、「過労運転」についてお話したいと思います。
過労運転とは
車両の運転者が過労により、正常な運転ができない恐れがある状態で車両を運転する行為といわれており、道路交通法にて禁止されています。
実際には「過労」が具体的にどういう状態なのかは明確になっていません。ですが、一般的には疲労の蓄積される労働状況、睡眠不足、心理的ストレス、生活習慣の悪さが過労状態を作り上げると言えるでしょう。
過労の兆候として表れる3大症状に「注意力の低下」「疲労感の増大」「眠気」が上げられています。中でも眠気がある状態での運転は、飲酒運転をしているのと同じくらい危険だとされています。
過労運転によるリスク
過労運転により業務中に重大な事故を起こした場合、運転者本人だけではなく事業主や運転管理者も処罰の対象となる可能性があります。
運転者本人
処罰対象 | 罰則 | 違反点数 |
---|---|---|
道路交通法66条 過労運転の禁止 | 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 | 25点 |
事業主・運転管理者
処罰対象 | 罰則 |
---|---|
道路交通法75条 過労運転の下命・容認 | 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
事業主が過酷な過労状態を運転者に強いていた場合、刑事罰だけでなく、事業主には車両使用制限命令や営業停止処分等の行政処分が科せられる場合もあります。そうなると会社のイメージダウン、取引先からの信用失墜、事業存続危機に繋がりかねません。
過労運転を防ぐには
労運転を防止するには、過労の元となる要因、過労の現れ方などそのメカニズムを正しく理解し、運転者、事業主・運転管理者共にコ過ミュニケーションを取り、過労防止に努めることが重要です。
運転者
自らの健康状態を正しく認識し、疲労やストレスを溜めないようにする
- 6~7時間の連続した睡眠、とりわけ夜間の睡眠が疲労を回復させ、過労防止に有効
- 眠も眠気を取るのには効果的だが、主睡眠が一定時間確保されていることが望まれる
- 度なストレス発散をして溜め込まないようにする
事業主・運転管理者
過労の本質を理解し、運転者が安全な運行が行えるよう配慮する
- 点呼にて運転者の健康状態、疲労の度合い、睡眠不足などをチェック
- 余裕のある運行計画を作成し、運行支援をすすめる
- 長距離運転、早朝・夜間運転勤務のある事業者は、これらについての社内ルールを明文化し、意識付けを行う
- 過労運転防止機器の活用(テレマティクス、デジタルタコグラフ、点呼機器、ドライバーモニターなど)
過労運転は重大な違反行為であることを運転者はもちろん、事業主、運転管理者も強く認識する必要があります。運転者は過労の兆候を敏感に捉え、危険を感じる場合は無理をせず身体を休めるように努めましょう。また、そのような時に運転者が身体を休めやすい環境づくりも重要と言えるでしょう。