今年も終わりが近づいてきました。12月は師走と呼ばれ、師僧も走る多忙な月という意味があります。仕事納めなどで慌ただしくなり、つい先を急いで運転にも焦りが出てしまう事があるかと思います。しかし、先を急いで運転しても実は効果がないことを皆さんはご存じですか?そこで今回は、先急ぎ運転での早さの錯覚と対処法についてお話したいと思います。
急いでも思うほど早く着かない
先を急ぐ行動というのは、生存のため本能的に人間に染みついている機能です。「約束の時間に遅れそう」「前の車が遅くてイライラする」など心に余裕がないと、信号無視、スピード超過・煽り運転、抜け道利用などの先急ぎ運転を無意識に行いがちです。速度を上げて急ぐ運転をすると「早く着くだろう」という期待感は高いものですが、ここである実験のデータをご紹介します。
全長12.5km通常約30分かかる道のりをどれだけ時間を短縮して到着できるかというアンケートをタクシードライバーの方々に実施したところ、ほとんどのドライバーが「5分から10分は短縮できるのではないか」と答えました。しかし、実際に12.5kmの道を急いで運転した車と、いつも通り安全に運転した車とで到着時間を比較すると、平均の差はたったの2分45秒でした。この結果から、ドライバーが思い描く「短縮できる時間」と、「実際に短縮できる時間」に大きな差があり、早さの錯覚を起こしていることが分かります。
ではなぜ、そのような錯覚が起きるのでしょうか。人類は長い時間をかけ、二本足で歩いて生活するように進化し、歩行社会で生きてきました。車が発明され、人間の進化よりも早く車が発達したことにより、スピード感の違いで錯覚を起こしているのです。
本来歩いて生活する人間は、一般的に80mを1分かけて歩くと言われています。仮に500m先に目的地があるならば、歩いて約7分、車なら時速60㎞で約30秒かかります。このスピード感の差が錯覚を起こしている原因だと考えられています。しかし車同士の実験の結果は、500mを安全運転で走行した場合は30秒かかり、急いだ運転で走行した場合は約28秒と、2秒しか変わらないという結果でした。先を急いだ結果2秒の短縮しかしないのであれば、いつも通り安全運転で走行し、事故を寄せ付けない方がいいはずです。
さらに先を急ぐデメリットとして、急加速をくり返すことによる燃費悪化があります。急加速をするとガソリンを通常より多く使うことになり、環境にも良いとは言えません。それに時間を気にしながら焦って運転をしていると疲れやすくなります。このように、先急ぎ運転は得られる結果の割にドライバーにとって悪影響を及ぼしてしまうのです。
自分の運転性格を見直そう
それでは先走り運転をしないようにするにはどうしたらいいのでしょうか。それにはまず自分の運転性格を知る事が大切です。運転にはドライバーの性格が如実に表れます。例えば身近なドライバーに優柔不断な人が車線変更をいつまでも躊躇したり、カッとなりやすい人が突然横入りされて暴言を吐いたり...といった事を見たことはありませんか?
先急ぎ運転は「焦り」や「苛立ち」の気持ちから起こりやすいので、せっかちな人やイライラしやすい人は特に注意が必要です。
以下のチェックシートで一度チェックしてみてはいかがでしょうか。
Aは焦りやすさ、Bはイライラしやすさのチェックです。チェックが4つ以上ついた人は「焦りやすい」または「イライラしやすい」傾向があるので要注意です。性格の傾向が運転に表れていないか、自部署内のメンバーで一度客観的に見直してみてはいかがでしょうか。
焦り運転の対処法
ここまでで急いで運転をしても時間は大きく短縮されないということは分かって頂けたと思います。とはいっても時間がなかったり、周りの人に急かされたり、つい焦ってしまう事はあるのではないでしょうか。そんな時に気持ちを落ち着けるポイントを3つお教えします。
時間の余裕がないのであれば少し余裕を持って出発する、焦りや苛立ちを感じたら一度深呼吸して気持ちを静める、といった「時間管理と気持ちのコントロール」ができるようになれば、先急ぎ運転をする必要はないはずです。
最後に
先急ぎ運転は危険運転、事故のリスクが非常に高まる危険な運転です。事故をせず2019年を終えるためにも、忙しくなりがちな時期こそいつも以上に気を引き締めて安全運転でお願いします。