5月に入り、新入社員の方々はビジネスマナーや基本的な社会人スキルの習得を目的とした研修を一通り終えて、これから各現場に配属され、実務と並行した研修に臨む時期ではないでしょうか。近年では業種や職種に合わせて研修内容も多様化しております。その中で、車の運転が不可欠となる職場において必ず受講頂きたい研修の一つが安全運転研修です。安全運転研修とはその名の通り、企業の看板を背負って業務に従事する社員のうち、車を運転する社員に対して安全運転の重要性や社会人としての自覚を意識づけるための研修です。
今回は安全運転研修を受講する(させる)必要性についてご紹介したいと思います。社内での研修活動等にもお役立て頂ければ幸いです。
安全運転研修の必要性
1:新入社員が受講する必要性
運転免許証を持っていれば車を運転できますが、免許証を持っているからと言ってその人が安全な運転をしているとは限りませんし、ゴールド免許だからと言ってその人の運転技術が高いとも言い切れません。
若年層のドライバーによる主な事故要因を調査すると、操作面においては「運転技術の未熟さ」が多く挙げられており、意識面においては十分な安全確認を怠る「安全不確認」や運転中に運転以外のことに視線を逸らす「脇見運転」、周囲への注視を怠る「動静不注視」といった交通安全における意識の低さが多く挙げられております。
これらの要因の一つとしては、免許証を取得したものの自動車を運転しないまま数年を経て、運転技術や意識が低下したまま社会人を迎える若者が多く存在するためだと考えられています。このような「ペーパードライバー」は企業に就職した後、新入社員として業務上自動車の運転を余儀なくされた場合に慣れない運転や業務多忙による安全不確認などで交通事故を起こしてしまう危険性が非常に高いのです。
さらに、車に興味を持つ若者は年々減少傾向にあります。多くの学生は将来のために何となく運転免許を取得し、運転経験が浅いまま社会人を迎え、車を運転するようになるのです。企業の採用担当者は、「免許を持っている」=「運転が出来る」と考えてしまいがちですが実際のところ、若者は運転経験が浅く運転が出来ない方もいれば、安全への意識が低い方もいます。中には、運転技術に長けている方や安全運転がしっかりと定着している方もいますが、それはごく一部です。そのため、社員に対して闇雲に「違反を起こさないように」「事故を起こさないように」と注意を投げかけても、正しい指導なくして事故を削減するのは困難です。社員の事故や違反を本当に減少させたいのであれば、車を運転するにあたって何を意識して、どのようなことに気をつけながら運転する必要があるのかを社員一人ひとりに対して理解させる必要があるのです。
2:管理者(車両担当者・上長)が実施する必要性
車の運転には常に危険が伴い、事故を起こす可能性は誰にでもあります。もしプライベートでの交通事故を起こした場合、個人に対して行政、民事、刑事の責任がそれぞれ課せられます。それでは業務中に起きた事故についてはどうでしょうか。
もし業務中に交通事故を起こした場合、個人に課せられる責任に加え、企業に対する運行供用者責任が課せられます。さらに損害賠償などの直接的損失に加えて、事故対応に関わる人件費の発生による営業機会の損失や、企業のイメージ失墜による取引の中止など目には見えない間接的損失も発生し、大きな損害をもたらします。ここまで挙げた事柄はほんの一部に過ぎませんが、一社員が起こした事故が企業に与える影響の大きさは計り知れません。そのため経営者、車両担当者や各部署の上長などは、企業を守る意味でも社員やその家族を守る意味でも細心の注意を払って事故を予防し、全社員が業務中に安全運転を徹底するように意識づける義務があります。
そこで車両担当者や各部署の上長は、社員に交通事故を起こさせないために教育や意識づけを行う必要があります。そのためには、指導者が正しい知識や方法を知っておかなければいけません。例えば、なぜこのような交通ルールが定められているのか、事故を起こした場合にはどのようなリスクが想定されるのかといった根拠や背景を指導者が認識し、正しく説明し、社員の理解を得る必要があります。
車を運転する全社員がプロのドライバーとして責任を持って仕事に従事できるようにするためにも指導者は安全運転に対する目的を明確化し、一人ひとりの社員に対して適切な指示や教育を行っていくことが欠かせません。社員の安全運転教育は企業を守るために必要不可欠であり、質の高い企業活動を営む上でも重要なファクターになります。
一度失った社会的信用を取り戻すには、多大な努力と長い時間が必要になることは言うまでもありません。このような結果に陥らないためにも、管理者が安全運転研修を受講し、社員への適切な指導を実施することが重要です。
実施することで期待できる効果
研修を実施し社員全員の安全運転意識を高めることで、事故発生件数の減少が期待できます。そして事故件数が減れば、交通事故発生に伴う賠償金の支払いや違反金の支払い等の経費も削減されます。例えば被害者に対する損害賠償・人身損害賠償では数億円、建造物に対する損害賠償・財物損害賠償では数千万円にもなる場合があります。この他に事故解決費用や被害者のお見舞い費用、示談交渉費用などさまざまな場面において費用が発生するかもしれません。
人件費についても同様のことが言えます。被害者のお見舞いや示談交渉、車両の修理など本来業務に充てることができた時間を事故対応により損失してしまうのです。これらのコストを発生させないためには、社員による交通事故を未然に防ぐ以外に方法はありません。つまり事故を防ぐことは営業機会損失の低減や企業イメージ失墜も防ぐことにも繋がります。
交通事故を起こすのが人である以上交通事故を減らすことは容易ではありませんが、交通事故が起きるのは仕方ないと目を背けてはいけません。企業が社員に対して安全運転研修を受講させ、一人ひとりが安全運転に努め、管理者が社員を正しい方向へ導くことができれば、交通事故は自然と減っていくでしょう。
最後に
ここまで安全運転研修(教育)の必要性について述べてきましたが現状、安全運転研修を導入している企業が少ないのも事実です。日本では道路交通法に基づき、ある一定台数以上の自家用車を保有する事業所においては安全運転管理者の選任義務を課しています。(詳しくはコラム「安全運転管理者の届出義務とその役割」をご覧ください)
社員一人ひとりの安全運転意識を高めることはもちろん、経営的な側面から「安全を守る」という企業の社会的責任のためにも、車を運転する社員に対しては安全運転研修を受講させ、管理者がしっかりとマネジメントすることが必要です。弊社においても新入社員および若手社員を対象とした安全運転研修を始め、さまざまなセミナーを定期的に開催しております。ご興味のある方は下のバナーよりぜひお申込みください。
また、会社全体の安全運転管理の強化をサポートするサービスも提供しておりますので、お気軽にご相談ください。