徐々に暖かくなり、春の訪れを感じる季節になりました。皆さんは、スタッドレスタイヤからノーマルタイヤへの履き替えはきちんと行っていますか。スタッドレスタイヤとノーマルタイヤは、シーズンごとにきちんと履き替えをした方がタイヤ自体の寿命が延びますし、安全性も高まります。
しかし、実際には「タイヤ交換が面倒」、「スタッドレスタイヤを履きつぶしたい」などの理由から春になってもスタッドレスタイヤを装着したまま走行している車が毎年多く見受けられます。そもそもスタッドレスタイヤとノーマルタイヤでは、どのような部分で違いがあるのでしょうか。
今回は、スタッドレスタイヤを一年中履き続けることのデメリットや危険性についてご紹介したいと思います。
冬季以外のスタッドレスタイヤ走行によるデメリット
スタッドレスタイヤは雪道や凍った道路に優れた冬季用のタイヤであることは、皆さんもご存じかと思います。それでは、冬季以外にスタッドレスタイヤを使い続けるとどうなるのでしょうか。ここでは、そのデメリットや危険性についてご紹介します。
1:燃費が悪くなる
冬季以外にスタッドレスタイヤを履き続けると、ノーマルタイヤに比べて燃費が悪くなります。その原因は、スタッドレスタイヤの柔らかさと重量にあります。スタッドレスタイヤは氷雪路でのスリップを避けるため、構造上、路面との摩擦を多くすることでグリップ力を高めています。
逆に言えば、路面との摩擦が多くなることで抵抗力が強くなるため、そこまでグリップ力がなくても走行できる通常の路面では燃費が悪くなってしまうのです。また、溝を深くすることでタイヤの剛性(弾力性)が弱くなってしまうのですが、スタッドレスタイヤはそれを補うために強度を増しています。そのため、スタッドレスタイヤはノーマルタイヤよりも重量があり、通常の路面ではスムーズに転がることが難しくなるので、こちらも結果的に燃費の悪化を加速させてしまいます。
2:滑りやすく、止まりにくい
スタッドレスタイヤは氷雪路を走りやすいように設計されているため、マイナス20度という低温でも硬くならない特殊なゴムが使用されています。前述の通り、スタッドレスタイヤは柔らかい素材でできているので、路面温度や気温が上がる夏場では、タイヤのゴムがさらに柔らかくなってしまい、摩擦力が弱まり、一層滑りやすくなってしまいます。
この状態で急ハンドルや急ブレーキといった危険挙動を伴う運転をすると、当然ながら危険度は高まり、事故に繋がり兼ねません。よって、通常の路面におけるスタッドレスタイヤでの走行は、慎重な運転をしていても危険だと言えます。
また、ブレーキをかけた際の制動距離は、スタッドレスタイヤの方がノーマルタイヤに比べて長くなります。これは、スタッドレスタイヤのトレッド面に細かく入った切れ込みがブレーキ時にかかる力に負けて変形しやすくなるためです。つまり、通常の路面をスタッドレスタイヤで走行すると、制動力が低下してしまうのです。そのため、上手くブレーキングができない状態に陥り、車が止まらないといった現象が起こるのです。
特に、スタッドレスタイヤを履いた雨天時の高速道路走行は危険であると言われています。なぜなら、氷雪路において発揮できるスタッドレスタイヤの特性が通常路面では一切効かなくなってしまうからです。さらには、そこに雨天という条件が加わることでメリットがなくなるどころか、デメリットに変化するとも言えます。下記は、スタッドレスタイヤを氷雪路と雨天時の高速道路でそれぞれ使用した場合の特性の変化を比較しています。
氷雪路の場合 | 雨天時の高速道路の場合 | ||
---|---|---|---|
タイヤの特性 | 吸水性 | タイヤと雪面の間の水分を吸収し、雪面に密着する | 水分を含み過ぎてしまい、タイヤと道路の間に水の膜を作る |
柔らかさ | 雪面の凹凸にもタイヤが密着できる | 水圧に負け、水を左右に押し出して路面に密着しづらくなる |
上記の通り、スタッドレスタイヤを履いた雨天時にノーマルタイヤと同じような感覚で急カーブを切ると、リヤタイヤが滑ってしまい、急ブレーキを踏んでもノーマルタイヤのようにすぐには止まれないため、事故に繋がる危険性があります。
スタッドレスタイヤには太い溝があるので一見水はけが良さそうに見えますが、実際はトレッド面に入っている切り込みが細かいため、排水しにくく、ノーマルタイヤよりもハイドロプレーニング現象に陥りやすいというデメリットがあります。
これにより、車はコントロール不能となり、衝突や横転へ繋がってしまう恐れがあります。
3:タイヤがバースト(破裂)する危険性がある
夏の高速道路では熱を持ちやすくなるため、ノーマルタイヤよりも柔らかい素材でできているスタッドレスタイヤはバーストする可能性が高くなります。特に、タイヤの空気圧が低い状態で高速道路を走行するのは危険です。また、急ブレーキや急ハンドルによって、タイヤの溝部分が変形することもあり、そこから亀裂が入って、バーストすることも考えられます。
タイヤをシーズンごとに履き替えるメリット
タイヤをシーズンごとに履き替えるメリットについてお話しします。スタッドレスタイヤとノーマルタイヤをシーズンごとに履き替えることで、タイヤをローテーションしながら使用できるため、総合的にみるとコスト面でお得になり、安全にも繋がります。
スタッドレスタイヤとノーマルタイヤを購入することで、導入費用はかさみますが、「冬季はスタッドレスタイヤ」、「それ以外はノーマルタイヤ」と正しく履き替えることで、タイヤの特性を最大限に生かした使用ができるため、各タイヤの寿命が延びます。
さらに、定期的にタイヤの位置をローテーションすることで、スタッドレスタイヤ・ノーマルタイヤともにバランス良く使用することができ、長期的かつ安全に使うことができるのです。タイヤは基本的に前輪に負荷がかかりやすいので、後輪タイヤと比較して減り具合は早くなる傾向があります。そのため、シーズンごとにタイヤのローテーションを行い、定期的にタイヤの位置についてもローテーションを行うことで、各タイヤの減り具合が抑えられ、常に均一なバランスを保ち、極端な偏りを防ぐことができます。タイヤのコンディションが良ければ、走行性能が向上することは言うまでもありません。
最後に
最近ではスタッドレスタイヤの性能も格段に上がり、氷雪路以外の走行でも以前に比べて安全かつ快適に使えるようになってきています。しかし、いくらスタッドレスタイヤの性能が上がっても氷雪路以外の道路では、ノーマルタイヤの方が走行に長けていることは間違いありません。そのため、スタッドレスタイヤは春になったらなるべく早めに交換し、ノーマルタイヤを使用する方が総合的に見てコスト面においても優れており、何より安全です。事故を起こすまでは「まだ走れる」、「まだ大丈夫」と思ってしまいがちですが、事故を起こしてからでは遅いのです。
もし、一年中スタッドレスタイヤのままで走行されている方や氷雪路をノーマルタイヤで走行されている方がいらっしゃれば、今後はタイヤの交換とローテーションを適切な時期に実施しましょう。手間や費用を考えると面倒に思う気持ちもわかりますが、何よりも安全を第一にお考え頂き、これを機にご自身あるいは会社におけるタイヤのご使用方法について改めて振り返ってみてはいかがでしょうか。