交通事故に繋がる危険には、走行している条件によってあらゆるものが存在します。普段何気なく運転している中にも数多くの危険が潜んでいるのです。事故削減には日常に潜む様々な危険に対して、いかに気づくことができるかが一つのカギとなります。そこで今回は、日常運転に潜む危険とそれを回避するための対策についてお話したいと思います。
ドライバーを取り巻く危険
一口に運転中と言っても、街中、高速道路といった走行場面から、走行時間、天候、路面状態など、あらゆる状況がドライバーを取り巻いています。その中にはどんな危険が潜んでいるのでしょうか。ほんの一部ですが、いくつか例を挙げてご紹介します。
1:時間
交通事故全体の約73%は昼間の事故ですが、死亡事故だけで見ると、夜間の事故が約49%にも上るため、夜間の事故の方が重大事故になりやすい傾向があります。さらに薄暮時(日没前後の1時間)の死亡事故は、昼間の4倍というデータもあり、視界が悪くなりがちな夕方~夜間の運転は特に注意が必要です。
ハイビームとロービームを使い分け、安全の確認を行いましょう。
2:走行場面
走行する場面によっても、危険なケースは変わってきます。街中や生活道路の場合、渋滞中の対向車線や、路上駐車中の車の間からの人や自転車の飛び出しなどが考えられます。特に自転車や高齢者は突然道路を横切ったり、予測しにくい動きをしたりすることも多いので注意しましょう。
高速道路では渋滞最後尾への追突、積み荷の落下、路肩に停車中の車への衝突等が考えられます。走行している車の速度が速く、事故の衝撃もより大きくなるため、被害も大きくなりがちです。
3:天候
天気においても雨天時の時間当たりの事故件数は、晴天時の約5倍も高いと言われています。
雨の日の事故が多いのは視界の悪さと交通量の増加といった原因もありますが、路面が滑りやすくなるのも大きな要因です。摩擦係数で比較すると、舗装路のドライ路面がμ=0.8前後なのに対し、ウエット路面が0.6~0.4と半分近くになります。
冬は路面凍結にも注意が必要です。外気温が+3度程度でも、路面上の水分が凍結している可能性があります。とくに橋の上は道路の下がスカスカなので、普通の道路より凍結しやすく非常に危険です。
危険予測で余裕ある安全運転を
走行中、ドライバーは周囲を目で見て、危険と判断したらブレーキを踏むなどの操作を行います。しかし、目で見える範囲は限られているため、車の陰から人が飛び出してきたり、前の車が急ブレーキをかけたりするなど予想外の出来事が起きると、対処しきれず事故に至ります。そこでドライバーはあらかじめ、その先で起こりうる危険を予測します。それによって危険に対する準備ができ、事故を未然に防ぐことが可能になります。
危険予測をしている場合の「危険に気付いてから事故を回避する行動に移すまでの時間」は、全くしなかった場合と比べておよそ半分だそうです。危険予測をしていれば、それだけ余裕を持って行動に移すことができます。
ただし、道路状況は刻々と変化します。次に何が起こるか、車や歩行者の動向を常に危険予測することで、安全で余裕のある運転が行えるようになるでしょう。
KYTの実施
危険予測には、日頃からのKYT(危険予知トレーニング)が効果的です。日常の運転場面が描かれたイラストや写真、映像を見ながら、その中にどんな危険が潜んでいるかを考えていきます。数名のグループでKYTを行い、危険箇所をディスカッションすることで自分が気づかなかった危険にも気付くことができます。最後に、最も危険だと思われる箇所についてどうしたら事故を防止できるかの対策案を検討し、危険回避のポイントをまとめましょう。
KYTのイラスト・動画、トレーニングシートなどはインターネット上で無料公開しているものもいくつかありますので、活用しながら部署内の危険意識向上に役立ててみてはいかがでしょうか。
最後に
危険予測の考え方として、「かもしれない運転」があります。「ここから人は飛び出してこないだろう」など、思い込みで判断するのではなく、「ここから人が飛び出してくるかもしれない」と事故が起きる可能性を考えて運転をしようという考え方です。今目の前で何かが起きるかもしれないと常に注意のアンテナを張りながらハンドルを握り、悲惨な事故の加害者にならないようにしましょう。