冠水したらどうする?水害時の対応

 先日西日本を中心に発生した記録的な豪雨は各地に大きな被害を残し、今も復旧作業が続いています。家はもちろんですが、車が水に浸かって流される被害も多く発生しています。みなさんは自分の車が水に浸かった時の対処方法を知っていますか?また、運転中に車内へ閉じ込められた時にはどうしたらいいでしょうか?今回は水害で車が水没した時の対処法をお教えしたいと思います。

冠水したら車はどうなる?

 車が水に浸かってしまうと、車はどんな状態になるのでしょうか。

車は水に浸かると動かなくなる

故障した車 車はエンジンにガソリンと空気を取り込み、圧縮・燃焼させることで動いています。燃焼してできた排気ガスはマフラーから排出され、また新たな空気を取り込むという作業をくり返します。
しかし水没してしまうとマフラーが塞がれ、排気も空気の取り込みもできません。こうなると次第にエンジンの調子は悪くなり、最終的にはエンストしてしまいます

 さらに怖いのが、エンジンに吸気を行うエアクリーナーへ水が入り込むことです。大量の水分を含んだ空気は、エンジンがガソリンと空気を圧縮できず、燃焼が起こりません。そのため突然車が停止してしまいます。こうなってしまうと、再びエンジンをかける事は不可能になります。

水没した車の行く末

多額の修理費用 水没によって車内のあちこちには細かい泥が入り込みます。修理をして乗ろうとすると、シートやマットといった布製品は臭いが出るので取り替えが必要です。また、車には精密機器が数多く搭載されています。それらの大半は水没によって問題が発生している場合が多く、破損や劣化が起き、火災や発煙する恐れもあります。運転を制御するような重要な部分に問題があった場合、修理代は高額になることが考えられます

 その修理費用の大きさもあってか、2000年に発生した東海豪雨では水没した車を手放して新規で購入される方が多かったようです。当時、その水没車両は中古車市場に流れましたが国内の中古車ディーラーは購入を敬遠したため、大半は買い手がつかず廃車になりました。しかし一部はパーツ取りを目的に外国人バイヤーが落札し、東南アジア等へ運ばれたようです。
 現在でも水没車は事故車・修復歴車と同等の扱いで、廃車になるケースが多いようです。しかし最近では海外での日本車需要を受け、買い取って海外で販売する業者も出てきています。

車に閉じ込められたら

 運転中に冠水して車内に閉じ込められた場合どのように対処するのがいいでしょうか。

1:エンジンを必ず停止させる

 感電を防ぐためにまずは必ずエンジンを停止させましょう。車はすぐには沈まず、4~5分ほどかけて徐々に水が入ってきます。慌てずに落ち着いて行動することが大切です。

2:シートベルトを外す

シートベルト外す 次にシートベルトを外して脱出の準備をしましょう。車内に老人、子供、ペットなどがいる場合は素早く前の座席へ移動させて抱きかかえ、先に脱出させられるようにしましょう。

3:脱出する

 ドアの半分くらい(約60センチ)が水に浸かってしまうと、水圧の影響で通常の5倍の力でないとドアが開かなくなります。このような場合は、窓からの脱出を試みます。浸水の度合いによってはパワーウィンドウが動く場合もありますが、水による電気系統のトラブルで開かなくなる場合がほとんどで、こうなると窓ガラスを壊すしかなくなります

脱出用ハンマー 窓ガラスを壊す際は、必ず両サイドか後方の窓を壊しましょう。フロントガラスは合わせガラスでできているのでひびが入る程度で割ることができません。そして車のガラスは割れにくくできていますが、窓ガラス破壊用のハンマーがあればすぐにガラスを割って脱出することができます。万が一のために常備しておくようにしましょう。

 もしハンマーもなく取り残された場合も、外の水位との差が小さくなった時を狙って窓を開けることができます。かなり車内に水が入った状態の水没する寸前に息を吸い込んでドアを押し開けることになるので、これは最後の手段になります。
 脱出する際は、子供、老人、ペットを優先して車外へ出します。窓からの脱出は仰向けになり、背中側から外へ出るようにすると脱出しやすいです。JAF(日本自動車連盟)が水没車両脱出の疑似体験動画を公開していますので、いざという時のために観ておくのもいいでしょう。

水に浸かった車の対処方法

 車が水に浸かってしまった場合の対処法をお教えします。

1:自分でエンジンをかけない

エンジンをかけない 水に浸かった車は見た目問題がなさそうでも、内部の機器に問題が起きている場合が大半です。感電事故や電気系統のショート等による火災が発生する可能性がありますので、自分でエンジンをかけることはやめましょう

2:バッテリーの端子(マイナス側)を外す

水没時バッテリー処置 発火を避けるために、使用するまでの間はバッテリーのマイナス側を外しておきましょう。この時、外したターミナルがバッテリーと接触しないようにテープで覆うなど行うようにしましょう

3:販売店、最寄りの整備工場などへ連絡

オペレーターへ電話 車両の措置にあたっては、販売店、整備工場などへ相談しましょう。加入している保険会社のロードサービスへ相談するのもいいでしょう。特にハイブリッド車・電気自動車の場合は高電圧のバッテリーを搭載しているため、むやみに触らないでください。また、通行の妨げにならないよう車をどうしても動かしたい場合は、シフトレバーをニュートラルにしてから押して移動させましょう

最後に

 水害への備えとして、自動車保険の補償内容を確かめることも大切です。豪雨による車の損害は、車両保険から保険金が支払われます。保険証券で加入状況を確認しましょう。
これからの季節、大気の状態が不安定になることで「ゲリラ豪雨」が発生しやすくなってきます。急な天候の変化には充分注意しましょう。実際の空の様子を見るのはもちろん、インターネット上の雨雲レーダーを確認して、天気の崩れを予測しましょう。