トヨタが燃料電池車「MIRAI」を国内で発売して3年が経ちました。この間、世界中で車の未来をめぐる議論がされており、2017年7月には、英仏政府が2040年までにエンジンを搭載した新車の販売を禁止する方針を打ち出し、大きなニュースとなりました。米カリフォルニア州にも、州内で一定数の自動車を売るメーカーは、販売台数の16%をゼロ・エミッション・ビークル※にしなければならないというZEV規制があります。
また、KPMGインターナショナルが世界の自動車関連企業の幹部を対象に実施した「2018年グローバル自動車業界調査」によると、2025年までの主要トレンドの1位は「燃料電池車(FCV)」で、52%の関係者が「極めて重要」と回答しています。2位は50%で「コネクテッドカー技術」でした。前回1位だった「電気自動車(EV)」は前年比1ポイント減の49%で3位に下がり、燃料電池車の注目度は増していると言えます。
そこで今回は今注目されている燃料電池車についてお話したいと思います。
※ゼロ・エミッション・ビークル=排出ガスがゼロの自動車。燃料電池車(FCV)、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)。今年からハイブリッド車(HV)は除外。
燃料電池車と電気自動車の違い
燃料電池車は二酸化炭素を排出しませんが、同じく電気自動車も二酸化炭素を排出しません。どのような違いがあるかご存知でしょうか?違いを表にして比較してみました。
燃料電池車(FCV) | 電気自動車(EV) | |
---|---|---|
特徴 | 燃料電池で、充填した水素と酸素を化学反応させて発電し、モーターを動かしている | バッテリーに充電された電気の力で、モーターを動かしている |
燃料 | 水素 | 電気 |
充電時間 | 3分 | 通常充電約8時間 急速充電約30分 |
満タン時航続距離 | 750km | 400km |
コンセントから充電 | × | ○ |
補給場所 | 水素ステーション(約100箇所) | 充電ステーション(約19,000箇所) |
燃料電池車も電気自動車も、共に電力で車を動かすというところに違いはありません。どちらの車とも、環境に優しい車ですが、普及を進めるためには、解決しなければならない問題点もあります。燃料電池車の更なる普及には、水素ステーションの普及が不可欠です。コンビニや道の駅、ショッピングセンター等を中心に水素ステーションが少しずつ増えてきました。
また、パソコンやスマートフォンから水素ステーションの場所を簡単に検索できることで利便性も高まっています。対して電気自動車は家庭では高速に充電はできず、また車のサイズの割には一回の充電で走行できる距離が短く、頻繁に充電が必要という問題があります。
燃料電池車の未来
東京都では水素社会の実現に向けて、水素ステーションの整備拡大や燃料電池自動車・バスなどの普及に力を入れています。2018年3月29日から東京駅丸の内南口と東京ビッグサイトを結ぶ都営バス「都05-2系統」で、2017年に導入した「トヨタFCバス」の2台と燃料電池バスの量産車「SORA」3台、合わせて計5台の燃料電池バスを同路線で運行しています。
トヨタはFCV「MIRAI」とともに、水素を用いる「トヨタフューエルセルシステム(TFCS)」を採用した次世代型車両の開発を推進しています。燃料電池バスは愛知県豊田市での実証実験などを経て、2017年に「トヨタFCバス」2台を東京都交通局にリースし、一般営業路線での運行も既に行われています。今回のSORAは、燃料電池バスとして国内初の型式認証を取得した量産車。2020年までに東京を中心に100台以上の導入を想定しています。
また、2020年の東京オリンピックでは燃料電池バスや自動車を活用して、選手や観客を輸送したり、燃料電池自動車による競技のサポートをする方針です。
最後に
まだ課題はありますが、燃料電池車と電気自動車には今までのガソリン車にはない、二酸化炭素排出ゼロというメリットがあることは事実です。今後インフラ整備や技術の進歩によって、さらに私たちの身近な存在になってくれることでしょう。
それぞれの長所を生かし、毎日短距離を乗る場合は電気自動車、航続距離が長く、環境へ配慮している企業イメージを大事にしたい場合は燃料電池車など、適材適所でそれぞれのエコカーが活躍してくれる社会が待ち遠しいですね。