このコラムでも紹介した「自動運転車」をはじめとして、自動車のあり方が大きく変わりつつあります。そんな中、「空飛ぶクルマ」の開発が世界各国で進められていて、中には販売を開始したものもあるそうです。漫画やアニメの世界でしか見たことのないような空飛ぶクルマが、今後世の中に普及していく可能性はあるのでしょうか?
今回は、そんな空飛ぶクルマを取り巻く実情や課題についてお話したいと思います。
空飛ぶクルマの現状
現在、空飛ぶクルマ「スカイカー」は、世界中のあらゆるメーカーが開発を進めています。ここで現在開発中の空飛ぶクルマをいくつか紹介したいと思います。
スロバキアのエアロモービル社が開発した「Aero Mobil(エアロモービル)」は、すでに予約が開始されているそうです。翼を出してトランスフォームする姿はまるでアニメや映画のよう。芝のような未整備の場所でも200mあれば飛べ、さらにレギュラーガソリンで700kmも飛べる燃費の良さも売りと言えるでしょう。こちらはすでに予約販売を始めていますが、価格は1億円以上と大変高価なため、購入する人は相当限られそうです。
またイギリスのパラジェット社が開発したスカイカーは、大型の回転翼とパラグライダーで飛行するバイオ燃料で動く車両で、現在最も現実的な空飛ぶクルマと言われています。
走り出してから約3分で飛行形態に移行し、地上で180km/h、空中では110km/hのスピードを出すことが可能だそうです。2009年にはロンドンからアフリカのマリまで6,000kmの飛行を成功させました。
こちらは価格も700万円台と空飛ぶクルマの中では比較的お手頃価格となっています。
この他にもアメリカのテレフギア社やカナダのモラー社など、数種類の空飛ぶクルマが開発されており、一般向け販売を目指しています。
日本での開発
欧米各国では盛んに開発されている空飛ぶクルマですが、日本は少し出遅れているように思います。しかし「Cartivator(カーティベーター)」という開発プロジェクトが発足し、開発を進めています。カーティベーターは自動車・航空業界等の若手メンバーを中心としており、2014年に「SkyDrive」の開発を開始しました。
「SkyDrive」はプロペラを4つ搭載した「クワッドコプター」と「3輪自動車」を組み合わせた世界最小サイズを実現し、公道から飛び立つことが可能になるそうです。現在は1/5試作機の走行・飛行に成功し、2019年までに有人飛行できる試作機の完成を進めています。
活動資金はクラウドファンディングでの支援を中心にしていましたが、今年の5月にトヨタ自動車をはじめとしたトヨタグループ15社から今後3年間で総額4,250万円の支援をすることが発表されました。2020年に実用化、2023年の一般販売開始を目指していくそうです。
今後の課題
漫画やアニメの世界が実現するようでわくわくさせてくれる「スカイカー」ですが、課題は山積みです。先に紹介した開発状況もですが、それ以外の課題について挙げていきたいと思います。
1:安全性
万が一墜落した時、周辺に与える被害は交通事故よりはるかに大きくなるでしょう。何もない場所なら被害も少ないかもしれませんが、人の多い繁華街などに墜落してしまったら、多くの人命を奪いかねません。操縦者はパラシュート等の脱出装置で脱出できても、本体はそのまま墜落してどうすることもできません。故障等のトラブル対応も課題となるでしょう。
2:法令整備
自動操縦モード等にしていたとしても、自動運転でカバーしきれない状況が発生した場合に搭乗者が空飛ぶクルマを操縦する必要があります。道路を運転するのに道路交通法があるように、空を飛ぶのにも様々な決まりがあります。現在の法律でそれをどうカバーしていくのか、もしくは新たに決まりを作る必要があるのかもしれません。ですから車両自体の開発と併せて、法令や免許制度についての整備も必要になってきます。
3:騒音
もしたくさんの空飛ぶ自動車が行き交う社会になった時、問題になってくるのは騒音です。何台もの空飛ぶ自動車が飛び交っていれば、自然と騒音は大きくなるものです。街中でこのような状況が起きてしまうと、生活に支障が出てしまうことが想像できます。静粛性の高い車体作りは間違いなく必要になりそうです。
最後に
課題が山積みの空飛ぶクルマは、まだまだ夢の乗り物と言えます。車両自体の開発はもちろんですが、運転するための法律や規制などの整備が急がれます。しかし将来移動手段の一つとして、空飛ぶクルマが広く普及していく未来には夢があふれています。
Cartivatorでは、「誰もがいつでもどこでも飛べる時代」を目指しているそうです。将来本当に空飛ぶクルマに誰もが乗れる日がくることを期待したいですね。