車に関する法令には道路交通法や道路運送車両法、都道府県ごとに定められた道路交通法施行細則がありますが皆さんはどれくらいご存知ですか?免許取得時に自動車学校である程度学んだとはいえ、年月が過ぎればうろ覚え...という皆さんが多いのではないでしょうか。スピード違反や信号無視、一旦停止違反等、日頃取締りをよく行っている内容は分かっていても、意外な内容で違反になる場合もあるのをご存知ですか?
そこで今回は、運転に関する意外と知られていない違反についてお話したいと思います。
車に乗り込むときに気を付けたい行動
1:サンダル・ハイヒールでの運転
サンダルやハイヒールでの運転はつい行いがちですが、違反になる場合があります。道路交通法ではサンダル・ハイヒール禁止と明確には定められてはいませんが、不適切であると考えます。かかとが固定されていない・不安定な履物は、滑ったり脱げたりする危険性が高く、運転に支障をきたす可能性があるからです。また、都道府県によっては道路交通法施行細則で履物の詳細が定められている場合もあり、違反した場合は反則金の支払いを命じられます。
女性でヒールの高い靴を履かれる方は、車内に運転用のスニーカーを準備しておくといいでしょう。
参考
道路交通法 第70条(安全運転の義務)
車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。
2:燃料チェックは確実に
車に乗り込んだら燃料が十分にあるか確認しましょう。高速道路を走行する場合は特に注意が必要です。というのは高速道路走行中にガス欠で車が止まってしまった場合に罰則を受ける可能性があるからです。過去の事例として、燃料切れで立ち往生した車が二車線のうち一車線を約20分間ふさぎ、最大1.3キロの渋滞を起こしたドライバーが、ガソリン残量の確認を怠った道路交通法違反にあたるとして罰則を受けた事例があります。車の不良に気付かず運転し、その状態で事故や渋滞を起こせれば企業の車両管理責任をも問われかねません。
運転前の車の状態を確認してハンドルを握るよう、ドライバーへも徹底させていきましょう。
点検については、こちらの記事もぜひ参考になさってみてください。
参考
道路交通法 第75条の10(自動車の運転者の順守事項)
自動車の運転者は、高速自動車国道等において自動車を運転しようとするときは、あらかじめ、燃料、冷却水若しくは原動機のオイルの量又は貨物の積載の状態を点検し、必要がある場合においては、高速自動車国道等において燃料、冷却水若しくは原動機のオイルの量の不足のため当該自動車を運転することができなくなること又は積載している物を転落させ、若しくは飛散させることを防止するための措置を講じなければならない。
運転時に気を付けたい行動
1:ぬかるみや水たまりの通行
雨の日に路肩を歩いている時、後ろから勢いよく車が走ってきて水たまりの水を思い切りかけられた経験はありませんか?実はこれも違反の対象になります。
車に乗っていると気づきにくいですが、スピードを出すほど、飛散する泥や水は歩行者や自転車へ飛び散ります。ぬかるみや水たまりを見つけたら徐行する、よけるなどして歩行者に迷惑をかけないようにしましょう。
参考
道路交通法 第71条(運転者の順守事項)
車両等の運転者は、次に掲げる事項を守らなければならない。
<1>ぬかるみ又は水たまりを通行するときは、泥よけ器を付け、又は徐行する等して、泥土、汚水等を飛散させて他人に迷惑を及ぼすことがないようにすること。
2:ハイビーム走行を続ける
見通しの悪い道路で活躍するハイビームですが、使い方にも注意が必要です。歩行者や対向車がいる場所でハイビームにしたまま運転すると相手の視界を妨げます。道路交通法では、第52条でライトの操作についても明記されています。
これによると他の車などと行き交う場合には、ロービームにして他のドライバーに配慮しなくてはならないということです。前から車がハイビームで向かってきて眩しい思いをされた方は少なくないと思います。お互いに気持ち良く運転するためにも、ハイビームとロービームは使い分けていきたいものですね。
参考
道路交通法 第52条(車両等の灯火)
車両等は、夜間(日没時から日出時までの時間をいう。以下この条及び第六十三条の九第二項において同じ。)、道路にあるときは、政令で定めるところにより、前照灯、車幅灯、尾灯その他の灯火をつけなければならない。政令で定める場合においては、夜間以外の時間にあっても、同様とする。
<2>車両等が、夜間(前項後段の場合を含む。)、他の車両等と行き違う場合又は他の車両等の直後を進行する場合において、他の車両等の交通を妨げるおそれがあるときは、車両等の運転者は、政令で定めるところにより、灯火を消し、灯火の光度を減ずる等灯火を操作しなければならない。
3:クラクションは必要最低限に
危険を知らせるためにクラクションを使いがちですが、安易に使いすぎるのも禁物です。クラクションは道路交通法等では「警音器」と規定され、その使用は道路交通法第54条で定められています。
基本的にクラクションを使える状況は以下の通り限られています。
・見通しの悪い交差点、曲がり角、上り坂の頂上
・危険を防ぐためにやむを得ない場合
・警笛鳴らせの標識で指定された区間
ですから「お礼のクラクション」も本来の使用状況としては好ましいとは言えないでしょう。クラクションは必要最低限に使っていきたいものですね。
参考
道路交通法 第54条(警音器の使用等)
車両等(自転車以外の軽車両を除く。以下この条において同じ。)の運転者は、次の各号に掲げる場合においては、警音器を鳴らさなければならない。
一 左右の見とおしのきかない交差点、見とおしのきかない道路のまがりかど又は見とおしのきかない上り坂の頂上で道路標識等により指定された場所を通行しようとするとき。
二 山地部の道路その他曲折が多い道路について道路標識等により指定された区間における左右の見とおしのきかない交差点、見とおしのきかない道路のまがりかど又は見とおしのきかない上り坂の頂上を通行しようとするとき。
<2>車両等の運転者は、法令の規定により警音器を鳴らさなければならないこととされている場合を除き、警音器を鳴らしてはならない。ただし、危険を防止するためやむを得ないときは、この限りでない。
駐車時に気を付けたい行動
1:エンジンをかけたままにしない
少しだけだから、とエンジンをかけたまま車を離れてしまうことはありませんか?これも実は道路交通法違反です。自動車から離れる時に他人に運転される状態にしてはいけないとされており、この状態で車を盗まれた場合、された側にも責任が問われます。コンビニ等へのちょっとした立ち寄りの際でも車を離れる時はエンジンを切り、鍵をかけるようにしましょう。
参考
道路交通法 第71条(運転者の順守事項)
車両等の運転者は、次に掲げる事項を守らなければならない。
5 車両等を離れるときは、その原動機を止め、完全にブレーキをかける等当該車両等が停止の状態を保つため必要な措置を講ずること。
<2>自動車又は原動機付自転車を離れるときは、その車両の装置に応じ、その車両が他人に無断で運転されることがないようにするため必要な措置を講ずること。
2:安全確認をせずドアを開ける
車を駐車して降車する際に安全確認を怠りそのままドアを開け、交通の妨げになるようなことをした場合にも道路交通法違反となります。ドアを開ける時、「後方から誰も来ないだろう」と決めつけてはいませんか?後方確認を怠ったために、自転車やバイクと衝突するケースは多いようです。ドアを開ける前にまずは後方確認を行い、同乗者がいる場合は安全が確認できるまでドアを開けさせないようにしましょう。
参考
道路交通法 第71条4の3(運転者の順守事項)
安全を確認しないで、ドアを開き、又は車両等から降りないようにし、及びその車両等に乗車している他の者がこれらの行為により交通の危険を生じさせないようにするため必要な措置を講ずること。
最後に
ここまで読んで「こんな事まで?」と思われた方もいらっしゃるかと思いますが、道路は社会全体のものです。道路を使う者として事故の無い交通社会を作るためには、ひとりひとりがルールを守ることが大切です。
また、安全運転管理の観点としてはドライバーへの意識付けが大切になってきます。会社の看板を背負ってハンドルを握っている以上、法令順守は徹底させなくてはなりません。安全教育や日々の声掛け等違反者を出さないための活動を弛まず行い、社内から交通違反者を出さないように活動していきましょう。