近年、若者の○○離れという言葉がクローズアップされ、ニュースなど特集される機会が多いと思います。その中でも一つの社会問題として、頻繁に取り上げられるものに「クルマ離れ」があると思います。
では、若者のクルマ離れとは何なのか、企業にどのような影響をもたらすかをお話したいと思います。
若者のクルマ離れとは
若者のクルマ離れとは今の若者、特に20歳代の人達が昔に比べ、車に乗らなくなった、関心がなくなったことを指します。
まず理由として挙げられるのは経済的な理由です。近年、若者の平均年収は下がっているにもかかわらず、車を購入した後にかかる税金や車検代などの負担は年々大きくなる一方です。また都市部の駐車場の料金もかなり負担となることから、公共交通機関が身近にあり移動に困る事の少ない都市部に住む若者中心に自動車を買わない人が増えていると考えられます。その他にも自動車以外の趣味の多様化やシェアリングサービスの普及など様々な要因があります。
若者のクルマ離れを示すデータとして、免許証の所持率の変化があります。車を使用するには必要な自動車免許ですが、20~24歳までの所持率を2015年と2001年で比較した場合、男性は7.9%、女性は5.1%の減少となっています。他の世代と比べ断トツの下げ幅です。このデータから分かる通り、やはり若者のクルマ離れは進んでいるようです。
自動車運転免許保有率の変化
注1:2001年と2015年の男女差は、男性の値から女性の値を引いたもの。
注2:2015年と2001年の差では、男性と女性で低下したものに赤字
男女差は、2015年の男女差から2001年の男女差を引いた値であり、マイナスの場合は男女差が縮小していることになる。
資料:警視庁「運転免許統計」及び総務省「人口動態統計」から作成
年齢(歳) | 2001 | 2015 | 2015と2001の差 | ||||||
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男性 | 女性 | 男女差 | 男性 | 女性 | 男女差 | 男性 | 女性 | 男女差 | |
20~24 | 87.8 | 77.3 | 10.6 | 79.9 | 72.2 | 7.7 | △7.9 | △5.1 | -2.8 |
25~29 | 96.0 | 87.7 | 8.3 | 92.0 | 85.7 | 6.3 | △4.0 | △2.0 | -2.0 |
30~34 | 98.8 | 90.7 | 8.1 | 96.8 | 90.9 | 5.9 | △2.0 | 0.2 | -2.2 |
35~39 | 97.2 | 87.8 | 9.4 | 97.3 | 91.8 | 5.5 | 0.1 | 3.9 | -3.9 |
40~44 | 96.3 | 84.2 | 12.0 | 97.2 | 91.9 | 5.3 | 1.0 | 7.7 | -6.7 |
45~49 | 93.9 | 76.7 | 17.2 | 97.5 | 91.0 | 6.6 | 3.7 | 14.3 | -10.6 |
50~54 | 93.1 | 68.5 | 24.6 | 97.0 | 88.4 | 8.6 | 4.0 | 19.9 | -16.0 |
55~59 | 90.4 | 55.7 | 34.7 | 95.4 | 83.2 | 12.1 | 4.9 | 27.5 | -22.6 |
60~64 | 86.8 | 40.4 | 46.4 | 92.5 | 74.1 | 18.3 | 5.7 | 33.7 | -28.1 |
65~69 | 79.8 | 24.8 | 55.1 | 92.2 | 64.4 | 27.7 | 12.3 | 39.7 | -27.4 |
70~74 | 71.5 | 13.5 | 58.0 | 82.5 | 41.8 | 40.8 | 11.1 | 28.3 | -17.2 |
若者のクルマ離れによる企業のリスク
若者のクルマ離れは日本の主幹産業でもある自動車業界の売上減少による関連企業の不振など大きな社会問題に繋がる可能性がありますが、自動車に係わっていない企業にとってもリスクがあると考えられています。
それは若手社員、特に新入社員の交通事故増加です。ある業界での営業の新入社員配属後1年間で起こした交通事故の発生率は、5割を超えており、全営業社員の2割に比べ高くなっています。また、入社前の運転状況の調査では「ほとんど運転しない」が33%、「月1回運転」が31%で、約6割が運転の経験が浅いという結果となっているのです。
クルマ離れの影響で車を所持している割合が低く、私生活でなかなか車に乗る機会が少ないため、いざ業務で運転をした場合に満足に運転する事ができない状態にある新入社員が多いと考えられます。
20~24歳の若手ドライバーの事故原因を法令違反別にみた場合、安全不確認や脇見運転などの安全運転義務違反が約8割を占めていることから、若手ドライバーは交通場面での危険を知らず、安全確認の対象や方法に対する適切な知識がないドライバーが多いのです。この事もクルマ離れにより運転経験の浅い若手ドライバーが増加によるものと考えられます。
新入社員の事故は自動車や身体の損害、損傷だけではなく、職場に慣れるのに精一杯である新入社員にとって、罪悪感などの精神的な負担も大きくなります。交通事故が原因で退職や休職せざる得ない状況に陥る可能性もある為、未然に防ぐ事が大切な事になります。
若手社員の事故を未然に防ぐには
新入社員の交通事故を防ぐには運転に慣れるまでは先輩や上司が同乗して、運転の手ほどきをするのが効果的です。安全運転のポイントを教え、また周囲から見られていることを意識させ企業ドライバーとしての自覚をもたせることが、非常に大切です。
安全運転のポイント
1:安全運転すべき対象を教える
信号のない交差点等で「人も車も来ないからそのまま進行しよう」と安易に判断すると、大きな事故につながる危険性があります。先にある危険を知ってもらうために、さまざまな交通場面で経験談を交えながら教えましょう。常に「危険が潜んでいるかもしれない」とその先の危険を予測して、運転するように指導しましょう。
2:声を出して安全確認を行う
声出し確認は、安全確認すべき対象を意識させます。安全確認すべき対象を理解していないまま、目で見るだけで確認しているとなんとなく確認しているだけになり、見落としが発生する危険性があります。
「対向車が来ない」「周囲に人がいない」ことを、目で見てしっかりと認識させるために、「対向車よし」「歩行者よし」と声を出して安全確認を行うように指導しましょう。
3:運転に集中できる環境を作るようにする
1秒にも満たないわき見が事故につながるため、カーナビや携帯電話は車を安全な場所に停めてから操作するように指導しましょう。また、運転の途中で携帯電話の通知音が鳴ると、運転から注意がそれる危険性があります。携帯電話はドライブモードに設定して運転に集中できるような環境をつくるように指導しましょう。
4:余裕をもって早めに出発するようにする
運転に不慣れなうえ、訪問する経路を把握していなかったり、時間の余裕がなかったりすると、必要以上に焦ってしまいます。そうなると、相手の動きを見過ごしたり、運転操作を誤ったりして事故を起こしやすくなります。
時間に余裕をもった訪問スケジュールをたて、早めに出発するように指導しましょう。
昨今、教習所などで新入社員向けの運転講習が充実しており、教習所で運転の適性判断や指導などを行うことにより自身の啓蒙に努めることができます。社内と社外、両方からの啓発活動で、新入社員にドライバーとしての自信を付けさせることが大切なのではないでしょうか。
終わりに
都市部での若者のクルマ離れは今後も続くものだと考えられます。その為、運転経験の浅い新入社員に対して会社として教育などを行う事で、未然防止活動を推進することがますます重要になっていくでしょう。