運転中、ついうとうとしたり脇見をした事でヒヤリとしたり、実際に事故を起こしてしまった経験はありませんか。自分なりの対処法で未然に防ごうとしても、ついつい...という事は多々あると思います。
しかし昨今、そのような事故を未然に防ぐ為の技術開発が進んでいます。最近CMでもよく見かける自動ブレーキや自動運転などが代表的なものですが、今注目されているのは運転手の眠気や脇見を検知して危険を知らせる技術です。
そこで今回は、このような運転手の危険を検知する技術についてお話したいと思います。
注意喚起技術の現在
運転手の行動や状態を検知するシステムは、あらゆる企業で開発が進められています。その中で多いのはカーナビを製造するメーカーです。パイオニアは、運転手の心拍数から眠気や疲労度を検知する技術を開発しました。座席に微弱な電気を流したときの反応などから心拍数を計測し、眠気や疲労の兆候である心拍数の低下を捉えるというものです。
検知の仕方ですが、運転席の背もたれ部分に心拍数を測るセンサーを埋め込むことで行っています。今後自動運転が普及しハンドルから手を離す運転手が増える可能性を考慮して、座るだけで検知できる座席の背もたれにセンサーを埋め込むことを想定しています。
他にカーナビメーカーでは、クラリオンが運転手の眠気や脇見を検知した時にシートに設置した装置の振動で覚醒させるシステムの開発を、アルパインは日本IBMと協力し車載センサーによりブレーキのかけ方やハンドルの切り方といった運転手一人ひとりの癖を把握する技術の開発に乗り出しています。
その他の企業では、アルプス電気がカメラと赤外線センサーにより視線の検知をすることができるシステムを開発しました。カメラで顔の向きを捉え、赤外線センサーで瞳孔と角膜の位置を検知して見ている方向を特定する事で視線の動きを検知して脇見や集中を欠く場合には運転手に警告が与えます。すでに自動車メーカーへの売り込みを開始しており、2021年頃の量産を目指しています。
さらにオムロンは、「ドライバー運転集中度センシング技術」を搭載した、世界初の車載センサーを開発し2019年~2020年に発売される自動運転車への採用を目指しています。
これは最先端のAI技術と独自の画像センシング技術との組み合わせで、運転に適した状態を手のひらサイズのカメラ1台でリアルタイムにレベル別判定します。レベル分けの段階や基準は顧客要望で変更でき、幅広い車種に対応が可能です。しかもネットワーク等への接続は不要なので既存車への後付けや低価格帯の車への搭載も期待できます。
技術開発が進む背景
各社がこうした安全技術の開発を進めているのには、今後開発が加速するとされている自動運転車を見据えていると考えられます。自動運転ならばハンドルから手を離して脇見や運転以外のことをしていいと思われる方もいるかもしれませんが、それは違います。自動運転には自動の度合いによりレベル分けがあり(詳しくはコラム「自動走行車の最前線」参照)、自動運転技術では対応のできない緊急時には自動運転が解除されて車両を操作しなくはいけない自動運転システムレベルのレベル3(現在実用化されている車両はなし)までは運転者に監視責任があります。
この場合、事故になった場合の責任はドライバーが負うことになります。眠気などで体調に異常がある状態で車両の操作が運転手に移った場合、事故のリスクが高まります。そのリスクを低減させるためにも、このような運転手の体調を検知する技術は必要とされております。
最後に
政府は2025年をめどに完全自動走行システムの実現を目標に掲げており、近い将来自動走行車が道路を行き交う社会は現実となる可能性が高まっています。しかし完全自動走行が可能になるのはもう少し先の話で、当面は自動運転と手動運転の切り替えが必要となりそうです。自動運転中、万が一に備えて運転を監視する行為はドライバー自身が運転するよりも注意が散漫になり眠気も強くなると想定されます。その為の防止策としてこれまでに紹介した技術は非常に効果的だと考えられます。
また、自動車の運転でなくともこのような注意喚起の技術はうっかり事故の防止に大いに繋がるのではないでしょうか。まだまだ開発の伸びしろがある分野でもありますので、今後の技術の発展が楽しみです。